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第10話 空(うつほ)なる真実
閑話休題、孤島にて Episode:09
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「理由はともかくとして、ここの主というのは……あの車椅子の人か……」
「違いますよ。ルーフェイアの母親のほうです」
一瞬の間。
そしてシルファは、納得したように何度も軽くうなずいた。
「あの人なら……確かにやるかもしれないな」
どういうわけか、あっさりと受け入れてしまったようだ。
(何をしたのやら)
カレアナの行動は常に常識外だが、シルファに対しても、そういうことをやったらしい。
「だがこれじゃ、ちゃんとした保護には……ならなくないか?
断れない任務は、危険なものが多いだろうし」
シルファの問いに、感心する。
いつの間にかこういうことを、瞬時に気づくようになったようだ。
実際シルファの言うとおり、断れない任務があるとすれば、「他の生徒では代えが利かないもの」だ。
当然そういうものは、名指しされた生徒の能力でしか為せないもので、それだけに危険も伴う。
その点を、シルファは指摘したのだ。
「あなたの言うとおりですが、この買い取りの意味は、おそらくそこだけではありません」
推測であることを前置いて――だが間違ってはいないはず――タシュアは話し始めた。
「もう気づいているでしょうが、私たちを買い取ったルーフェイアの母親とその家は、財界の実力者でもあります」
「だろうな……。アヴァンでのルーフェイアも、すごかった」
何があったのは知らないが、どうもルーフェイアまで、その手の権力を使ったらしい。
タシュアの視線に気づいたのか、シルファが言いわけめいたことを言う。
「その、あれだぞ。別にわざとじゃなくて……私が困っていたのを、助けてくれたんだ」
「後輩に助けられてどうするのです」
つい突っ込むと、シルファが睨んできた。どうやらまた、怒りが再燃したらしい。
(困りましたねぇ)
よほど根が深いようだ。
もっともこの件に関しては、タシュアはそれ以上突っ込む気はなかった。
基本的に大人しく受け身のルーフェイアが、横からそれだけのことをしたのだ。
通常では手に負えないような事態が起こり、それを何とかしたというところだろう。
なのでそれ以上は触れず、話を先に進める。
「ともかく、そういう家です。だとすれば私たちが学院を出たとしても、あるいは退学になったとしても、職には困らないでしょうね」
「……!」
シルファも気づいたようだった
「違いますよ。ルーフェイアの母親のほうです」
一瞬の間。
そしてシルファは、納得したように何度も軽くうなずいた。
「あの人なら……確かにやるかもしれないな」
どういうわけか、あっさりと受け入れてしまったようだ。
(何をしたのやら)
カレアナの行動は常に常識外だが、シルファに対しても、そういうことをやったらしい。
「だがこれじゃ、ちゃんとした保護には……ならなくないか?
断れない任務は、危険なものが多いだろうし」
シルファの問いに、感心する。
いつの間にかこういうことを、瞬時に気づくようになったようだ。
実際シルファの言うとおり、断れない任務があるとすれば、「他の生徒では代えが利かないもの」だ。
当然そういうものは、名指しされた生徒の能力でしか為せないもので、それだけに危険も伴う。
その点を、シルファは指摘したのだ。
「あなたの言うとおりですが、この買い取りの意味は、おそらくそこだけではありません」
推測であることを前置いて――だが間違ってはいないはず――タシュアは話し始めた。
「もう気づいているでしょうが、私たちを買い取ったルーフェイアの母親とその家は、財界の実力者でもあります」
「だろうな……。アヴァンでのルーフェイアも、すごかった」
何があったのは知らないが、どうもルーフェイアまで、その手の権力を使ったらしい。
タシュアの視線に気づいたのか、シルファが言いわけめいたことを言う。
「その、あれだぞ。別にわざとじゃなくて……私が困っていたのを、助けてくれたんだ」
「後輩に助けられてどうするのです」
つい突っ込むと、シルファが睨んできた。どうやらまた、怒りが再燃したらしい。
(困りましたねぇ)
よほど根が深いようだ。
もっともこの件に関しては、タシュアはそれ以上突っ込む気はなかった。
基本的に大人しく受け身のルーフェイアが、横からそれだけのことをしたのだ。
通常では手に負えないような事態が起こり、それを何とかしたというところだろう。
なのでそれ以上は触れず、話を先に進める。
「ともかく、そういう家です。だとすれば私たちが学院を出たとしても、あるいは退学になったとしても、職には困らないでしょうね」
「……!」
シルファも気づいたようだった
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