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第10話 空(うつほ)なる真実

閑話休題、孤島にて Episode:07

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「その前に、着替えを。風邪をひきます」

 促すと、彼女はうなずいてクローゼットを開けた。
 しばらく逗留しているせいで、持ち物は鞄から出してあるらしい。

 着替えを持って、部屋に備えられた浴室へ、彼女の姿が消えた。

 扉ごしに響く水音を聞きながら、どう言えばいいのか考える。

 シルファが向けている好意がどんなものかは、分かっているつもりだった。
 彼女自ら身体を許すのが、どういう意味を持つのか、さすがのタシュアでも理解できる。

 むしろ、だからこそ、だった。

 それだけの好意を向けてくれているのに、何かの形で彼女の成長を邪魔するようなことは、あってはならないと思う。
 いまのうちにと呼び鈴を鳴らし、温かい飲み物を頼み、待つ。

 やがて水音が止み、髪を纏め上げたシルファが姿を見せた。

「それで、話というのは……」
「二点ほど。ですがまず、かけてはどうです?」

 椅子を勧め、落ち着いたところで話し出す。

「一点目ですが……あなたの学院内での立場が、変わったのは知っていますか?」
「何のことだ?」

 どうやらカレアナは、まだこの件を話していなかったらしい。

(真っ先に当人に言うべきでしょうに……)

 もっともタシュアのときも、頭越しに決めて事後通達だったことを思うと、今回もそうなのだろう。

「私が卒業までの期間、すでに買い取られていることは知っていますね?」
「ああ、聞いた」

 タシュアもこの件については、シルファに話している。
 それをきちんと、覚えていたようだ。

「推測ですが、シルファ、あなたも同じ状況になっています」

 彼女が、いぶかしむような表情になった。

「……どういうことだ?」
「そのままとしか言いようがないのです」

 言って、簡単に説明する。

 学園長室であった、幾つもの意味ありげな会話と行動。
 加えて先程のカレアナの、「シルファはうちで預かる、これでいいじゃない」の台詞。

 これらから考えられる結論が、シルファの買取しかない。そう彼女に言う。

「よく分からないが……買われるとどうなるんだ?」
「特には。時々急に呼び出されて、よく分からない任務まがいのことを、させられることはありますが」

 シルファがあきれた顔になった。

「それじゃいったい、何のために買うんだ? 意味がないじゃないか」
「私に訊かれても。買った当人に聞いてください」

 そうは言ったものの、だいたいの見当はついていた。
 おそらく、母親がらみだろう。
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