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第10話 空(うつほ)なる真実

孤島にて Episode:15

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「サリーアと申しますわ。こちらを預かっておりますの。
 もっとも形だけで、実務は他の方がやってくださるのですけどね」
 たおやかに微笑みながら、ルーフェイアに似た金髪碧眼の、車椅子の女性が挨拶する。

「タシュア=リュゥローンと申します。お招きにあずかって、光栄ですよ」

 毒舌と皮肉の応酬をしながら、記憶を探った。

 サリーアという名は、もぐりこんだシュマーの通信網で目にしたことがある。
 現総領はルーフェイアの母カレアナだが……たしか、その片腕だったはずだ。

 ――まさか、半身不随とは思わなかったが。

 シュマーには、戦えなくなったものを切り捨てる印象があったが、少々違うようだ。

「まぁ。喜んでいただけるなんて、こちらこそ光栄ですわ」
「私は喜んでいるなどと、言った覚えはありませんが?」

 すかさずタシュアは返す。

「集団の是非はともかくとして、人の上に立つような方がまともに言葉も理解できないのは、かなり問題でしょうね」
「あら、そうでしたの? それは失礼しましたわ」

 平然とうそぶいてみせるあたり、このサリーアという女性、相当したたからしい。

「ともかく立ち話もなんですから、こちらへ。飲み物でも用意させますから。
 おばさまもいらっしゃいます?」

 タシュアを無視することはなく、だが話には乗らずに進めていく。

「シルファさんが何故ここへ来たかだけは、先にお話させてくださいね。荷物のほうはなんでしたら、お部屋のほうまで運ばせておきますわ」

「結構です」

 サリーアの申し出を断る。
 もとがたいした荷物ではないし、何より他人に触らせたくなかった。

「では、お持ちになったままで」

 学院からシュマーの船で直接来たため、タシュアは例の大剣を持ったままだ。

 だがそれを、彼女は恐れるふうもなかった。
 まるで見えていないかのように、ごく自然に振舞っている。

 甘く見ているのか、それともよほど自信があるのか。
 あるいは、最初から諦めているのか。

 だが目の前の彼女の態度は、どれも微妙に違う気がした。

(片腕と呼ばれているのは伊達ではない、ということですか)

 いずれにせよ、かなりの食わせ者なのだろう。
 むしろそうでなくては、シュマーの中で引きずり降ろされているはずだ。

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