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第10話 空(うつほ)なる真実
孤島にて Episode:05
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拗ねる様子が可愛くて、気の毒と思いながらも、私もつい笑う。
サリーアが、ルーフェイアの頭を撫でてやりながら言った。
「お夕食はどうなさいまして? もしご予定がなければ、私もご一緒させていただければと、思うのですけれど」
「あ、はい、もちろん」
気づくとそう、答えていた。だいいちこの状況で、断れるわけもない。
この女性が、にっこりと微笑む。
「嬉しいですわ、許していただけて」
言葉遣いといいしぐさといい、ルーフェイア以上にしとやかそうだ。
どこかの貴族の娘と言っても、通用するかもしれない。
そこへ、ここの人らしい男性が来た。
私たちの手前で止まって、丁寧に一礼する。
サリーアが私たちに会釈して、男性を近くへ呼び寄せた。
「……それで、先方はなんと?」
何かを耳打ちされた瞬間、彼女の纏う雰囲気ががらりと変わる。
「それが条件が変わったとの理由で、契約の修正を求めておりまして……」
「そう。
――たしかあの社はユズベクで、魔力石の原石をを採掘していたわね。標準のレートより、ずいぶん安いと有名ではなかった?」
その辺の野菜の値段でも訊くような、そんな口調。
「はい、仰るとおりでございます。」
すっとサリーアの瞳が、細められた。
「ルートは洗ってあるのでしょう? すぐにまとめて出してくださいね。交渉には私が出ます。
そうそう、ロデスティオどなたかと、話せないかしら? 交渉のあとでいいわ」
「かしこまりました」
人を見かけで判断してはいけないというが、ここまで外見を裏切る人も珍しい。
足の悪い、気の毒な深窓の令嬢と思っていたら、じつは雌豹だったというやつだ。
去っていく男性を見送ってから、ルーフェイアの従姉は、私たちのほうに向き直った。
「ごめんなさいね、なんだか落ち着かなくて」
さっきとはうってかわって、穏やかに微笑んで言いながら、ルーフェイアの頭をまたなでる。
「すぐ……出るの?」
「いいえ。交渉するにしても、明日以降の話ですもの。それに、資料が揃わなくてはね」
不安そうなルーフェイアに、優しく答える。先ほどの迫力が嘘のようだ。
サリーアが、ルーフェイアの頭を撫でてやりながら言った。
「お夕食はどうなさいまして? もしご予定がなければ、私もご一緒させていただければと、思うのですけれど」
「あ、はい、もちろん」
気づくとそう、答えていた。だいいちこの状況で、断れるわけもない。
この女性が、にっこりと微笑む。
「嬉しいですわ、許していただけて」
言葉遣いといいしぐさといい、ルーフェイア以上にしとやかそうだ。
どこかの貴族の娘と言っても、通用するかもしれない。
そこへ、ここの人らしい男性が来た。
私たちの手前で止まって、丁寧に一礼する。
サリーアが私たちに会釈して、男性を近くへ呼び寄せた。
「……それで、先方はなんと?」
何かを耳打ちされた瞬間、彼女の纏う雰囲気ががらりと変わる。
「それが条件が変わったとの理由で、契約の修正を求めておりまして……」
「そう。
――たしかあの社はユズベクで、魔力石の原石をを採掘していたわね。標準のレートより、ずいぶん安いと有名ではなかった?」
その辺の野菜の値段でも訊くような、そんな口調。
「はい、仰るとおりでございます。」
すっとサリーアの瞳が、細められた。
「ルートは洗ってあるのでしょう? すぐにまとめて出してくださいね。交渉には私が出ます。
そうそう、ロデスティオどなたかと、話せないかしら? 交渉のあとでいいわ」
「かしこまりました」
人を見かけで判断してはいけないというが、ここまで外見を裏切る人も珍しい。
足の悪い、気の毒な深窓の令嬢と思っていたら、じつは雌豹だったというやつだ。
去っていく男性を見送ってから、ルーフェイアの従姉は、私たちのほうに向き直った。
「ごめんなさいね、なんだか落ち着かなくて」
さっきとはうってかわって、穏やかに微笑んで言いながら、ルーフェイアの頭をまたなでる。
「すぐ……出るの?」
「いいえ。交渉するにしても、明日以降の話ですもの。それに、資料が揃わなくてはね」
不安そうなルーフェイアに、優しく答える。先ほどの迫力が嘘のようだ。
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