648 / 743
第10話 空(うつほ)なる真実
再び学院にて Episode:02
しおりを挟む
(――ですがどちらにしても、いいことですか)
1人で行く気になったのなら、昔のトラウマが少しは薄れた事になる。
逆に誰かと行ったなら、そういう相手が増えたという事だ。
どちらだったにせよ、悪いことではない。
そこまで考えているうちに、カップが空になった。
眺めながらまた考える。
このまま資料の整理にかかってもいいのだが……お腹が空いた。
何か食べようにも、帰ったばかりのため魔冷庫は空だ。
なので食堂に行こうと部屋を出る。今ならまだ、朝食の提供時間内だ。
学院は夏休みでも、変わらず賑やかだった。
暑いのも相変わらずだが、真昼に比べればずっといいだろう。
今日のメニューはなんだろうなどと、他愛ないことを考えながら、食堂の前まで来た時だった。
「あ、タシュア、いいところに」
珍しい事に、呼び止められる。
シルファと同じクラスのディオンヌだった。
「何か用ですか?」
例によって感情のない冷たい声だったが、シルファとよく一緒に居て慣れているのだろう、彼女は気にする様子もない。
「用がなかったら、声かけないってば。
――シルファ、いま部屋?」
「知りません」
即答。これで会話は終わるはずだった。
「知らないわけないでしょ、一緒に旅行行ってた人が」
「彼女とは行っていませんよ。別行動です」
タシュアの返答に、ディオンヌが考え込む。
「じゃぁシルファ、どこ行っちゃったんだろ……」
「行き先など、提出された書類を見れば分かるはずですが」
日帰りでケンディクへ行くだけでも、外出の許可は必要なのだ。
ましてや長期の旅行なら、許可なしはあり得ない。
「上級隊の資格を持つあなたが、その程度も知らないのですか?」
ついでに毒舌を付け加えたが、ディオンヌはやはり気にしなかった。
「そりゃ知ってるわよ、そのくらい。じゃなくて、居場所が分かんなくなってるの!」
予想もしない答えに、耳を疑う。
「どういうことなのです?」
問いに「細かくは知らない」と前置きをしてから、ディオンヌが話し出した。
1人で行く気になったのなら、昔のトラウマが少しは薄れた事になる。
逆に誰かと行ったなら、そういう相手が増えたという事だ。
どちらだったにせよ、悪いことではない。
そこまで考えているうちに、カップが空になった。
眺めながらまた考える。
このまま資料の整理にかかってもいいのだが……お腹が空いた。
何か食べようにも、帰ったばかりのため魔冷庫は空だ。
なので食堂に行こうと部屋を出る。今ならまだ、朝食の提供時間内だ。
学院は夏休みでも、変わらず賑やかだった。
暑いのも相変わらずだが、真昼に比べればずっといいだろう。
今日のメニューはなんだろうなどと、他愛ないことを考えながら、食堂の前まで来た時だった。
「あ、タシュア、いいところに」
珍しい事に、呼び止められる。
シルファと同じクラスのディオンヌだった。
「何か用ですか?」
例によって感情のない冷たい声だったが、シルファとよく一緒に居て慣れているのだろう、彼女は気にする様子もない。
「用がなかったら、声かけないってば。
――シルファ、いま部屋?」
「知りません」
即答。これで会話は終わるはずだった。
「知らないわけないでしょ、一緒に旅行行ってた人が」
「彼女とは行っていませんよ。別行動です」
タシュアの返答に、ディオンヌが考え込む。
「じゃぁシルファ、どこ行っちゃったんだろ……」
「行き先など、提出された書類を見れば分かるはずですが」
日帰りでケンディクへ行くだけでも、外出の許可は必要なのだ。
ましてや長期の旅行なら、許可なしはあり得ない。
「上級隊の資格を持つあなたが、その程度も知らないのですか?」
ついでに毒舌を付け加えたが、ディオンヌはやはり気にしなかった。
「そりゃ知ってるわよ、そのくらい。じゃなくて、居場所が分かんなくなってるの!」
予想もしない答えに、耳を疑う。
「どういうことなのです?」
問いに「細かくは知らない」と前置きをしてから、ディオンヌが話し出した。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
外れスキルと馬鹿にされた【経験値固定】は実はチートスキルだった件
霜月雹花
ファンタジー
15歳を迎えた者は神よりスキルを授かる。
どんなスキルを得られたのか神殿で確認した少年、アルフレッドは【経験値固定】という訳の分からないスキルだけを授かり、無能として扱われた。
そして一年後、一つ下の妹が才能がある者だと分かるとアルフレッドは家から追放処分となった。
しかし、一年という歳月があったおかげで覚悟が決まっていたアルフレッドは動揺する事なく、今後の生活基盤として冒険者になろうと考えていた。
「スキルが一つですか? それも攻撃系でも魔法系のスキルでもないスキル……すみませんが、それでは冒険者として務まらないと思うので登録は出来ません」
だがそこで待っていたのは、無能なアルフレッドは冒険者にすらなれないという現実だった。
受付との会話を聞いていた冒険者達から逃げるようにギルドを出ていき、これからどうしようと悩んでいると目の前で苦しんでいる老人が目に入った。
アルフレッドとその老人、この出会いにより無能な少年として終わるはずだったアルフレッドの人生は大きく変わる事となった。
2024/10/05 HOT男性向けランキング一位。
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
婚約者は聖女を愛している。……と、思っていたが何か違うようです。
棗
恋愛
セラティーナ=プラティーヌには婚約者がいる。灰色の髪と瞳の美しい青年シュヴァルツ=グリージョが。だが、彼が愛しているのは聖女様。幼少期から両想いの二人を引き裂く悪女と社交界では嘲笑われ、両親には魔法の才能があるだけで嫌われ、妹にも馬鹿にされる日々を送る。
そんなセラティーナには前世の記憶がある。そのお陰で悲惨な日々をあまり気にせず暮らしていたが嘗ての夫に会いたくなり、家を、王国を去る決意をするが意外にも近く王国に来るという情報を得る。
前世の夫に一目でも良いから会いたい。会ったら、王国を去ろうとセラティーナが嬉々と準備をしていると今まで聖女に夢中だったシュヴァルツがセラティーナを気にしだした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる