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第10話 空(うつほ)なる真実

ノネ湖にて Episode:10

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「遥かなる天より裁きの光、我が手に集いていかずちとなれ――」

 同属性の呪文が、精霊のふるう力とほぼ同時に発動する。

「ケラウノス・レイジっ!」

 二重に発動した雷撃が、辺りを薙ぎ払った。
 あの独特の、大気の焼けるにおいが漂う。

 さすがに効いたのだろう、動きを止めた竜たちの中へ、私は踊りこんだ。
 1匹の首をかき切り、返す刃でもう1匹の胸を突く。

 向こうでもルーフェイアが、残る1頭の懐へもぐりこみ、太刀を急所へ突き立てる。

 念のために3頭の竜の首を落とし、絶命したのを確認して……それですべて終わりだった。
 ルーフェイアと二人、緊張を解く。

「だ、だいじょうぶかい?」

 まだ興奮しているのだろう、少しうわずった声で、先輩が訊いてくる。

「問題ありません。まだもしかしたら、別のやつが残っているかもしれませんが、今は平気です。
 ケガした方を連れて行くなら、いまのうちにお願いします」

 私の言葉にうなずいて、 先輩が診療所へと車を出す。

 ただ言葉とは裏腹に私自身は、とりあえずここまでだろうと思っていた。

 このタイプの竜はたしかに知能は低いが、学習能力がないわけではない。
 仮に他にいたとしても、一瞬で3頭も倒されれば、とうぶんは人間を警戒する。

 だから当面は、問題ないはずだ。

 ――それにしても。

 当たり前の顔をして、太刀をざっと手入れしているルーフェイアに、舌を巻く。
 この子が強いのは分かっていたが……ここまでとは思っていなかった。

 やったこと自体は、誰でも出来ることだ。
 力を発動するまでに時間がかかる精霊と、もっと早く発動する通常の魔法。この2つを組み合わせたに過ぎない。

 通常の魔法はもちろん、威力のある精霊でも、範囲を広げれば効果は落ちる。
 だからさっきのように竜を3頭もとなると、精霊でもダメージは薄かった。

 それを通常魔法で補強して、一時的にでも動きを止める。いい戦術だ。

 だがとっさに判断を下し実行出来る人間は、そうはいないだろう。
 私も今まで思いつきもしなかったし、今すぐやれと言われれば不安が残る。

 周囲の人間に被害が及ばないかどうか、じっさいに間に合うかどうか、重なった威力がどうなるか。
 そういったさまざまな要件を加味した上で、一瞬で判断しなければいけないのだ。
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