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第10話 空(うつほ)なる真実

アヴァンにて Episode:22

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「このたびはううちのバカ息子が、カレアナ様のお嬢様とも知らず、とんでもない失礼をしでかしまして。
 きつく言っておきますので、どうかお許しください」

 今日のことを母さんに言うとか言ったら、おじさん、泣きそうな気がした。

「あの、別にそんな、謝らなくても……」

 何かしたのは母さんだと思うし。
 でもそこで思い出して、あたしは付け加えた。

「あ、でも、街の人に迷惑かけるのは、出来たら……やめてもらえませんか?
 あと、ここのホテルにも……えっと、うちの系列なので」

 おじさんが、直立不動の姿勢になった。

「は、はい! 全員によく言い聞かせて、二度とこのようなことが、ないように致しますので!
 ほら、お前もよく謝りなさい!」

 おじさん、息子――要するにさっき叩きのめした人――の頭を、ムリヤリ下げさせる。

「なんで俺が……」
「黙らんか!」

 一喝ついでにおじさん、息子さんの頭も容赦なく殴った。

「ホントに申し訳ありません、デキの悪いせがれでして。私に免じて、ここはひとつお許しくださいませんでしょうか」

 どう答えようか、ちょっと悩む。
 そもそも「私に免じて」と言われても、このおじさんがどこの誰か分からない。

 けど黙ってたらおじさん、何か勘違いしたみたいだ。
 ひたすら頭を下げて、息子の頭も下げさせて、「この償いはきっとさせる」とか言ってる。

「えっと、その、償いとかはいいですから……さっき言った、迷惑かけないようにだけ、していただければ」

 おじさんがまた、気をつけの姿勢になった。宣誓でもしそうだ。

「はい、それはもちろん!
 なんとまぁ、お優しいお嬢さまで。うちのバカ息子に、爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいほどです」

「え、あの、それは……」

 汚いと思うのだけど。
 でもおじさんは真剣な顔だから、ホントにやってしまいそうだ。

「それであの、大変申し訳ないのですが、このあと予定がありまして……」

 考え込んでたあたしに、おじさんがすまなそうに言う。

「その、お嬢さまさえ差し支えなければ、おいとまさせていただこうかと」
「あ、はい。こちらこそお引止めして、申し訳ありませんでした」

 あたしがそう言うと、おじさんまたぺこぺこお辞儀をする一方で、息子さんを小突きながら帰っていった。



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