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第10話 空(うつほ)なる真実

アヴァンにて Episode:20

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 ◇Rufeir

 魚を食べたあと、また少し泳いで、先輩とあたしはホテルへと戻ってきた。
 けど、ホテルのロビーがなんだか騒がしい。

「どうしたんでしょう?」
「私に訊かれても……」

 たしかにそうだ。
 ホテルのことを、先輩が知るわけがない。

 誰か知ってそうな人に訊こうと、フロントのほうに行こうとして、あたしは理由を見つけた。

「先輩、あの人、さっきの……」
「そうだな」

 どこかの誰かがホテルに文句を言いにきたみたいで、支配人が中へ入るのを押し留めながら、なだめてる。
 そして押し入ろうとしてる一行の中に、さっき浜辺で叩きのめした、男の人たちがいた。

 ただ、中心人物ってわけじゃないらしい。
 もっと恰幅のいいおじさんが、この一行をまとめてるみたいだ。

 先輩と目配せして、そっと死角から近づいてみる。

「ともかくうちの息子に、狼藉を働いたものが、このホテルにいるのは間違いないんでね。話し合わせてもらいたい」
「恐れ入りますが、ご宿泊でない方のご要望には、お応え致しかねます」

 要するに、叩きのめした相手――つまりあたしたち――を、引っ張り出そうってことらしい。
 あたしたちがホテルの日よけを使っていたから、そこからきっと、ここを突き止めたんだろう。

「なるほど、客じゃないからと言うわけか。ならば、部屋を取るだけだが?」
「ご予約、ありがとうございます。ですが大変申し訳ありませんが、本日は満室でございます」

 支配人さん、平然と言ってのける。
 シュマーの関係者なだけあって、肝は据わってるみたいだ。

「私が誰だか、分かっているだろうな?」
「ご要望に従えず、大変申し訳ありません、お客様」

 相手の言い方からすると、それなりの人らしい。
 でも支配人さんはそんなこと、知らん顔だ。

 まぁうちの系列を預かるくらいだから、万が一暴力沙汰になっても支配人さん、ちょっとやそっとじゃケガもしないだろう。
 もしかしたら違う方向から、違う圧力がかかるかもしれないけど……それもイザとなればどうにでもできる。

 ――いちおう、姉さんに連絡したほうが、いいかな?

 姉さんはシュマーの事務方を預かってる関係で、財界なんかに顔が利く。
 そこから手を回しておいてもらえば、立ち退きなんてことにもならないだろう。

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