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第10話 空(うつほ)なる真実
アヴァンにて Episode:16
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イマドがルーフェイアを学院に連れてきた、という噂もあるが、この辺はよくわからない。
どちらにしても、仲良しが居るのはいいことだろう。
「そうしたら、今日はもう少し……いろいろ、やってみないか?」
「あ、はい♪」
喜ぶこの子に、一つ一つ教えていく。
以前にも感じたことがあるが、ルーフェイアは飲み込みは早かった。
自分の身体を扱うのが上手いというか、コツを掴むのが上手と言うか……ともかく、上達が早い。
相当鍛えこんでいるらしく、息が上がる気配もなかった。
ここへ来る前にどこで何をしていたかは、詳しくは知らない。
だが噂どおり、タシュアと同じような経歴なのだろう。
ともかくしばらく教えて、ある程度メドがついたところで声をかける。
「一旦、上がらないか? おなかも空いただろう?」
こくりとうなずいて、この子がついてきた。
荷物を置いていた日よけ――ホテル側が用意してくれた――の陰で、手早く身体を拭いてやり、砂を払った足にサンダルを履かせる。
「何が食べたい?」
「えっと……」
辺りに出ている屋台を、この子が見回す。
と、珍しく視線が止まった。
――なるほど。
目の前の海で獲れる小魚を串に刺し、ただあぶり焼いた物がこの辺りの名物らしいのだが、そこに視線が行っている。
そういえば今までも食事の時は、この子は魚をよく選んでいたから、きっと肉より好きなのだろう。
「あの魚でいいか?」
「いいん……ですか?」
「ああ。行こう」
答えて歩き出す。
だがその私たちを、人影がさえぎった。
「君たち、2人だけ?」
若い男性が3人。
ルーフェイアと顔を見合わせて囁き合う。
(お知り合いですか?)
(ルーフェイアの、知り合いじゃないのか?)
つまり、どちらの知り合いでもなかったらしい。
男たちが着ているのは、ブランド物の水着と上着のようだ。
だがトレーニングで鍛えただけの身体は、どう見ても無駄なだけだった。
実戦で鍛えた身体は、こういうのとは全く違う。
そう思った瞬間、なぜか余計に腹が立った。
当の本人たちは強いつもりでいるらしく、妙な自信とおかしな笑い方とを見せている。
どちらにしても、仲良しが居るのはいいことだろう。
「そうしたら、今日はもう少し……いろいろ、やってみないか?」
「あ、はい♪」
喜ぶこの子に、一つ一つ教えていく。
以前にも感じたことがあるが、ルーフェイアは飲み込みは早かった。
自分の身体を扱うのが上手いというか、コツを掴むのが上手と言うか……ともかく、上達が早い。
相当鍛えこんでいるらしく、息が上がる気配もなかった。
ここへ来る前にどこで何をしていたかは、詳しくは知らない。
だが噂どおり、タシュアと同じような経歴なのだろう。
ともかくしばらく教えて、ある程度メドがついたところで声をかける。
「一旦、上がらないか? おなかも空いただろう?」
こくりとうなずいて、この子がついてきた。
荷物を置いていた日よけ――ホテル側が用意してくれた――の陰で、手早く身体を拭いてやり、砂を払った足にサンダルを履かせる。
「何が食べたい?」
「えっと……」
辺りに出ている屋台を、この子が見回す。
と、珍しく視線が止まった。
――なるほど。
目の前の海で獲れる小魚を串に刺し、ただあぶり焼いた物がこの辺りの名物らしいのだが、そこに視線が行っている。
そういえば今までも食事の時は、この子は魚をよく選んでいたから、きっと肉より好きなのだろう。
「あの魚でいいか?」
「いいん……ですか?」
「ああ。行こう」
答えて歩き出す。
だがその私たちを、人影がさえぎった。
「君たち、2人だけ?」
若い男性が3人。
ルーフェイアと顔を見合わせて囁き合う。
(お知り合いですか?)
(ルーフェイアの、知り合いじゃないのか?)
つまり、どちらの知り合いでもなかったらしい。
男たちが着ているのは、ブランド物の水着と上着のようだ。
だがトレーニングで鍛えただけの身体は、どう見ても無駄なだけだった。
実戦で鍛えた身体は、こういうのとは全く違う。
そう思った瞬間、なぜか余計に腹が立った。
当の本人たちは強いつもりでいるらしく、妙な自信とおかしな笑い方とを見せている。
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