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第10話 空(うつほ)なる真実

アヴァンにて Episode:14

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「ちょっと待っててくれるか? 着替えてくる」
「はい」

 先輩がバスルームへ、着替えを持って入って行った。

 ――先輩、どんなのかな?

 でも出てきた先輩、割と普通の黒の水着だった。
 ただ、腰に水色の長い布をスカートみたいに巻きつけて、白い上着を羽織ってる。

 ホントはおそろい期待してたんだけど……。
 けど一緒に買ったわけじゃないし、しかたないと諦める。

「その、何か……変か?」
「え? あ、綺麗です」

 慌てて答えてから、先輩をもう一回よく見る。

 なんか身体の感じが、母さんみたいだな、と思った
 母さんほどじゃないけど、でもとってもやわらかそうで……。

「る、ルーフェイア、なんでそこで触るんだ……」
「え?」

 母さんなんか触れ触れってうるさいのに、先輩違ったんだろうか?

「あの、えっと、ごめんなさい……」

 視線を落として謝る。
 一瞬の間。

「これで、いいか?」
「――♪」

 先輩に抱き寄せられて嬉しくなる。
 やわらかくて、あったかくて……。

「ルーフェイアは……お母さんが、好きなんだな」
「はい」

 母さんには会うと振り回されてばっかりだけど、でも強くて、優しくて、嫌いってわけじゃない。

「良かったな、いいお母さんで」
「えっと……」

 これはさすがに、はいと言えない。

「違うのか?」
「その……うちの母、すごく変わってて……」

 娘のあたしから見ても、母さんかなりとんでもない人だ。
 常識とか、そういうものは絶対、どっかに落としてきてる。

 ――悪い人じゃないし、すごいのも確かなんだけど。

 でも「いいお母さん」かって言われると、やっぱりなんか違うだろう。

「その、まぁ、ともかく大事にするんだぞ?」
「あ、はい」

 どうやったら大事にできるのかは、ぜんぜん見当つかないけど。

 とりあえず先輩がそのまま動かないでくれてるから、胸に顔をうずめて抱かれたままにする。

「甘えん坊だな、ルーフェイアは。
 ――さぁ、そろそろ行こう。日が暮れて、海に入れなくなるぞ?」

 先輩の言うとおりだ。せっかく海へ来て水着まで着たのに、泳がなかったら意味がない。

「はい♪」

 あたしと先輩は連れ立って、ホテルの目の前の海岸へ向かった。
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