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第10話 空(うつほ)なる真実

学院にて Episode:13

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「あの、すみません、お待たせして……」
「用意が終わったなら、行くぞ」

 それだけ言って先輩が歩き出して、あたしはまた慌てて後ろに付いていった。

 ――ほんとに、どうしちゃったんだろう?

 普段からじゃ考えられないくらい、シルファ先輩の機嫌が悪い。

「ほら、早く」
「は、はいっ」

 言われるとおり、急いで連絡船に乗り込む。

「あの、どこに……」
「どこでもいい」

 座る場所を訊いても、そんな感じだった。

 結局空いている席へ、そっと座る。
 シルファ先輩も隣に座って、それだけはほっとした。

 船が動き出す。
 昨日帰ってきたばっかりなのにもう出かけるなんて、なんだかおかしな気分だった。

 湾を出て、外海が見えてくる。
 高くなった陽が遠い海面で、きらきらと踊っていた。

 ――どこ、行くんだろう。

 ケンディクへ向かってる以上、そこから列車でどこかへ行くんだろうけど……。
 けどとてもじゃないけど、先輩に訊けるような雰囲気じゃない。

 ぼんやりいろんなことを考えているうち、船が止まって、波止場へと降りた。

 青い風が、流れていく。
 夏色の海。朝色の空。

 でも先輩は、それさえ目に入ってないみたいだ。

「行くぞ」
「は、はい」

 学院の時と同じで、ただ真っ直ぐに歩っていく。 
 どこへ訊きたかったけど、訊いたら怒られそうだ。<

「あの……」

 でも途中でさすがに不安になって、声をかける。

「なんだ?」
「え、あ、あの、えっと……なんでも、ないです……」

 やっぱりできるのは、後ろを付いてくことだけみたいだ。

「そうか」

 先輩の方は当たり前だけど、行き先が分かってるんだろう。迷いのない足取りだった。
 でも方角から、やっぱり列車に乗るらしい。

 だったら行き先はたぶん、まずはイグニールだ。
 ただ、そこで終わらない気がする。だとすると、アヴァンまで行くんだろうか?

 夕べそっちのほうから帰ってきたのに、ホントに同じ場所へ、また行くことになりそうだった。

 ――あ、でも、少し違うかな?

 この間は行きも帰りもシュマーの高速艇だった。
 そう思うと、ちょっと楽しくなる。

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