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第10話 空(うつほ)なる真実

学院にて Episode:12

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「え、あれ……?」

 思わずつぶやく。向こうから歩いてくるの、シルファ先輩みたいだ。
 だけどいつもおだやかなのに、なんか今日はとても急いでて――途中で教官に話しかけられても、立ち止まりもしなかった。

 ――どうしちゃったんだろう?

 きっと、何かあったんだろうけど……。
 それからいくらも経たないうちに、先輩があたしの傍へ来た。

「――あの、先輩?」

 なんだか凄い勢いで、やっとそれだけ声をかける。
 そのままだったら行き過ぎそうだった先輩が、あたしに気がついて立ち止まってくれた。

 でも振り向いたその表情に、なんだか鬼気迫るものがる。

「どう、なさったんですか……?」
「ルーフェイア、予定は空いているな!」

 鋭く言われて、その場にあたしは立ちすくんだ。

「え、あ、は、はい……」
「だったら旅行へ行くぞ!」
「え……?!」

 あんまりにも唐突で、どうしていいか分からなくなる。
 けど今日のシルファ先輩は、信じられないくらい強引だった。

「旅行へ行くんだ!」
「は、はいっ!!」

 もうびっくりして、思わず返事をする。

「ほら、早くっ!」
「あ、あの、そしたらあの、荷物……」

 うろたえながらどうにかそう言うと、ようやく先輩がトーンを下げてくれた。

「ん? ――あ、そうか」

 先輩の表情が少しおちついて、ほっとする。
 でも、それだけだった。

「正門のところにいるから、早く荷物を持ってくるといい」

 有無を言わさない口調。

「あのっ、すぐ、戻りますから!」

 これ以上はないっていうくらいあたしは慌てて、寮へと身を翻した。

 ――シルファ先輩、いったいどうしちゃったんだろう?

 何かあったっていうことだけは、分かるんだけど……。
 ともかく考えてるヒマもなさそうで、部屋へ飛び込むとあたしは急いでクローゼットから着替えを出した。

 2・3日分の下着と着替えと……あとはいざとなれば、どこかで買えば済むはずだ。
 それにいつもまとめてあるツールキットと戦闘服、タオルと現金とカードを放りこんで終わりにする。

 あとはもう急げるだけ急いで、案内板のところへと戻った。
 シルファ先輩の姿が見える。
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