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第10話 空(うつほ)なる真実

学院にて Episode:04

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「そうそう、それがうちの娘でね。学校から帰って来ちゃ、よく君の話をしてくれるんだよ」
「そう、なんですか……」

 そういえば彼女の自宅はブティックで、お父さんがデザイナーだと言うのを、何かで聞いたかもしれない。
 それにしても私のことなど、何を話しているんだろう?

「ともかく、せっかく来たんだ。あがっていきなさい」
「あ、はい……」

 上手く断れなくて、中へと連れていかれる。

「いやぁ、夏休みになるとミルのやつ、アヴァンへ行きっぱなしでね。
 静かなのは確かなんだが、物足りないんだよ」

「はぁ……」

 だとすると、私はミルの代わりなんだろうか?

 ともかく店の奥の部屋へと、私は上がらされた。
 お菓子とお茶とが、出される。

「いつもうちのミルが世話になって、悪いねぇ。
 それで、少し時間はあるかい?」

「え、ええ……」

 なんだかおかしな成り行きだ。
 なにより、既に時間は取っているような……。

「あれ、急いでたかい?」
「いえ……」

 確かに買いたいものはたくさんあるけれど、大急ぎと言うわけでもなかった。

「そうかそうか、それじゃちょっと、ここで待っててくれるかな。
 せっかくだから、見てもらいたい物があるんだ」

 言うが早いが、ミルのお父さんは奥へと引っ込んだ。
 ひとり、応接室に取り残される。

 ――どう、しよう。

 どうにか話をして、おいとましないと……。

 けどどう言ったらいいのか、まったく思い浮かばなかった。
 タシュアはこういうことを切り抜けるのが上手いが、私はそもそも人と話すこと自体、下手だ。

 どうしたらいいかと考え込んでいるうち、意外に早くお父さんは戻ってきた。
 しかも両手に、抱えきれないほどの服を持っている。

「それは……?」

 まさか、買えと言うのだろうか?
 でも本当に、ブランド物を買えるほどのお金などないし……。

 困りきっておろおろしていると、よほどそれが可笑しかったのか、ミルのお父さんが笑った。

「ああ、すまないすまない。ちゃんと言わなかったからね。
 気にいったのがあったら、ぜひ持っていってくれないかな? なにしろこの通り、溜まって困ってしまってるんだ」

「え……?」

 あまりにも唐突で、言われたことが良く飲み込めない。

「あの……??」

 この人がまた、笑った。
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