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第9話 至高の日常
破局 Episode:09
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◇Loa
あ、派手に始めたなぁ……。
野次馬よろしく病院のほうを眺めてたあたしの耳に、爆発音が届いた。
けどまぁ、こゆ時の突入は派手にやるのがセオリーだから、当然と言えば当然。
むしろ閃光弾が使えない分、大人しい部類にはいるかもしれない。
ちなみに今回、あたしの出番は派手さに欠けた。
ルーフェが潜入したあと、連絡役をしてただけだ。
――ま、いいんだけど。
言われたことはちゃんとこなしてるんだから、これで落ちたら採点システムがおかしい。
でもそんなことより、あの子のほうが心配だった。
「ルーフェ、どしたかな?」
「心配ありません、グレイス様ですから」
執事だかなんだかみたいなおじさんが、きっぱり断言する。
真剣な顔したルーフェに頼まれたのは、この人たちとの連絡係だった。
だから一緒にいるのは礼儀正しいオジサンと、南方系の女の人の2人。
たぶん、シュマーの人なんだろう。だとしたら確かに、他の学院生にも教官にも頼めない。
しかもここを通じて、中の様子が伝えられるんだから、ある意味責任重大だった。
ちなみにこの執事なオジサンは、ルーフェのことはよく知ってるらしい。
だからなのか、心配してるそぶりは全くなかった。
「確かにルーフェ強いけど。でもさ、世の中万が一ってことも……」
ちょっと言ってみる。でも執事なオジサンの答えは変わんなかった。
「グレイス様に、それはあり得ませんので」
やけに自信たっぷりだ。
まぁ確かにあの子のことだから、そう簡単にはかすり傷も追わないだろうけど……。
だけど世の中ってば、何があるか分からない。
ただ突入なんて、始まっちゃえば短時間で終わる。
と言うか、それ以上かけてるようじゃ話にもならない。
そんなことを思いながら突入の行く末をしばらく見物してた時、突然光が閃いた。
「なに、あれ……?」
閃いたなんてもんじゃない。
なんの前触れもなしに上空に現れた光球が、辺りをはっきり照らしだした。
くっきりと地面に影が落ちる。
「私は初めてですね、ああいうものを目にするのは」
「普通そうだと思うけど」
こんな時まで冷静な、執事のオジサンの声。それを聞きながら光の正体を見極めようと、手を翳しながら仰ぎ見る。
――え?
目を細めながら見たのは、ちょっとやそっとじゃ信じられないモノだった。
だってどう見てもあの空にいるの――人だ。
「人、のようですが」
おじさんも冷静に指摘する。
「ですけど、あれは人じゃありませんわ……」
連絡役のシュマーのお姉ちゃんが、呆然とつぶやいた。
「んじゃ何? 人のカッコした人外?」
「それは……」
お姉ちゃんが口篭もる。
だけどゆっくり降りてくる「それ」は、何度見ても人で……。
「シルファ先輩かな?」
確か先輩去年の海竜騒ぎで、こんな技を披露?してくれてたはずだ。
でもまだ、何かが腑に落ちない。
そこへ、恐ろしい言葉が放たれた。
「恐らく、グレイス様かと」
「えっ――?!」
けど、けど、人があんなになっちゃったら……。
背筋が寒くなる。
でもこの場所からは――本当は何が起こっているのか、知りようもなかった。
あ、派手に始めたなぁ……。
野次馬よろしく病院のほうを眺めてたあたしの耳に、爆発音が届いた。
けどまぁ、こゆ時の突入は派手にやるのがセオリーだから、当然と言えば当然。
むしろ閃光弾が使えない分、大人しい部類にはいるかもしれない。
ちなみに今回、あたしの出番は派手さに欠けた。
ルーフェが潜入したあと、連絡役をしてただけだ。
――ま、いいんだけど。
言われたことはちゃんとこなしてるんだから、これで落ちたら採点システムがおかしい。
でもそんなことより、あの子のほうが心配だった。
「ルーフェ、どしたかな?」
「心配ありません、グレイス様ですから」
執事だかなんだかみたいなおじさんが、きっぱり断言する。
真剣な顔したルーフェに頼まれたのは、この人たちとの連絡係だった。
だから一緒にいるのは礼儀正しいオジサンと、南方系の女の人の2人。
たぶん、シュマーの人なんだろう。だとしたら確かに、他の学院生にも教官にも頼めない。
しかもここを通じて、中の様子が伝えられるんだから、ある意味責任重大だった。
ちなみにこの執事なオジサンは、ルーフェのことはよく知ってるらしい。
だからなのか、心配してるそぶりは全くなかった。
「確かにルーフェ強いけど。でもさ、世の中万が一ってことも……」
ちょっと言ってみる。でも執事なオジサンの答えは変わんなかった。
「グレイス様に、それはあり得ませんので」
やけに自信たっぷりだ。
まぁ確かにあの子のことだから、そう簡単にはかすり傷も追わないだろうけど……。
だけど世の中ってば、何があるか分からない。
ただ突入なんて、始まっちゃえば短時間で終わる。
と言うか、それ以上かけてるようじゃ話にもならない。
そんなことを思いながら突入の行く末をしばらく見物してた時、突然光が閃いた。
「なに、あれ……?」
閃いたなんてもんじゃない。
なんの前触れもなしに上空に現れた光球が、辺りをはっきり照らしだした。
くっきりと地面に影が落ちる。
「私は初めてですね、ああいうものを目にするのは」
「普通そうだと思うけど」
こんな時まで冷静な、執事のオジサンの声。それを聞きながら光の正体を見極めようと、手を翳しながら仰ぎ見る。
――え?
目を細めながら見たのは、ちょっとやそっとじゃ信じられないモノだった。
だってどう見てもあの空にいるの――人だ。
「人、のようですが」
おじさんも冷静に指摘する。
「ですけど、あれは人じゃありませんわ……」
連絡役のシュマーのお姉ちゃんが、呆然とつぶやいた。
「んじゃ何? 人のカッコした人外?」
「それは……」
お姉ちゃんが口篭もる。
だけどゆっくり降りてくる「それ」は、何度見ても人で……。
「シルファ先輩かな?」
確か先輩去年の海竜騒ぎで、こんな技を披露?してくれてたはずだ。
でもまだ、何かが腑に落ちない。
そこへ、恐ろしい言葉が放たれた。
「恐らく、グレイス様かと」
「えっ――?!」
けど、けど、人があんなになっちゃったら……。
背筋が寒くなる。
でもこの場所からは――本当は何が起こっているのか、知りようもなかった。
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