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第9話 至高の日常
掌握 Episode:08
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「おかしく、ないか?」
「ええ、ぜんぜん。病院の人だっても、たぶん誰も疑わないですよ」
「そうか」
我ながら単純だが、少しほっとする。
ここの職員と同じに見えるなら、そんなにおかしくはないのかもしれない。
主任が心配そうに、声をかけてきた。
「ウエストとか、きつくない?」
「ウエストより、胸が……」
腰周りはいいのだが、胸周りがぎりぎりだ。
「――なんか、ちょっと悔しいわね」
「え?」
主任が何か不満そうだったが、理由は分からなかった。
「まぁいいわ、ちゃんと着られてるし。じゃ、そろそろ行く?」
「ああ」
まとめてあった荷物を、もう一度持ち直す。
「じゃぁ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
どこかへちょっと出かける、タシュアのそんな感じの見送りを背に、病室をあとにした。
見張りの居る廊下を無言で歩き、隣の病棟の、ナースステーション近くの病室へ案内される。
「いちおう、頼んでここを確保したんだけど……どうかしら? 職員の控え室のほうがいい?」
問われて考える。
距離的なことを考えれば、ナースステーションに隣接しているという、控え室のほうがいいだろう。
だがたしか、そこは大勢の職員が避難しているはずだ。
だとするとかえって、いろいろやりづらい可能性もある。
「そこは……いま何人くらい、いるんです?」
「そうねぇ、あたしの病棟じゃないから分からないけど……たぶん10人以上じゃないかしら。
うちも同じ広さだけど、若い助手の先生、座れないって愚痴ってたっけ」
どうやら、かなり狭いうえに、人も多いようだ。
「そこって、外見えます?」
イマドが横から、妙な質問をする。
「外? 見えるわけないでしょ。外が見えるのは病室だけ。ナースステーションも控え室も、仮に窓があったって、見えるのは廊下だけよ」
何を当たり前のことを、そんな調子で主任が答えた。
じっさいここは、そういった施設は病室に挟まれて中州のようになっているから、窓がないのは見れば分かる話だ。
けれどイマドの思惑は違ったようで、さらに問いかけてきた。
「ええ、ぜんぜん。病院の人だっても、たぶん誰も疑わないですよ」
「そうか」
我ながら単純だが、少しほっとする。
ここの職員と同じに見えるなら、そんなにおかしくはないのかもしれない。
主任が心配そうに、声をかけてきた。
「ウエストとか、きつくない?」
「ウエストより、胸が……」
腰周りはいいのだが、胸周りがぎりぎりだ。
「――なんか、ちょっと悔しいわね」
「え?」
主任が何か不満そうだったが、理由は分からなかった。
「まぁいいわ、ちゃんと着られてるし。じゃ、そろそろ行く?」
「ああ」
まとめてあった荷物を、もう一度持ち直す。
「じゃぁ、行ってくる」
「行ってらっしゃい」
どこかへちょっと出かける、タシュアのそんな感じの見送りを背に、病室をあとにした。
見張りの居る廊下を無言で歩き、隣の病棟の、ナースステーション近くの病室へ案内される。
「いちおう、頼んでここを確保したんだけど……どうかしら? 職員の控え室のほうがいい?」
問われて考える。
距離的なことを考えれば、ナースステーションに隣接しているという、控え室のほうがいいだろう。
だがたしか、そこは大勢の職員が避難しているはずだ。
だとするとかえって、いろいろやりづらい可能性もある。
「そこは……いま何人くらい、いるんです?」
「そうねぇ、あたしの病棟じゃないから分からないけど……たぶん10人以上じゃないかしら。
うちも同じ広さだけど、若い助手の先生、座れないって愚痴ってたっけ」
どうやら、かなり狭いうえに、人も多いようだ。
「そこって、外見えます?」
イマドが横から、妙な質問をする。
「外? 見えるわけないでしょ。外が見えるのは病室だけ。ナースステーションも控え室も、仮に窓があったって、見えるのは廊下だけよ」
何を当たり前のことを、そんな調子で主任が答えた。
じっさいここは、そういった施設は病室に挟まれて中州のようになっているから、窓がないのは見れば分かる話だ。
けれどイマドの思惑は違ったようで、さらに問いかけてきた。
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