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第9話 至高の日常

開始 Episode:14

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「この精霊……イマドに、だろう?」
「そうでしょうね」

 タシュアもシルファも上級傭兵なので、当然自分の精霊を持っている。
 それにルーフェイアが必死に渡そうという相手は、ひとりしかいない。

 ――渡す側のご当人は、自分で分かっていないが。

 どこへ落としてきたのか、あの少女はそういう感情が見事に欠落している。
 だがルーフェイアが予測どおり動いてくれたおかげで、立てていた作戦がそのまま実行できそうだった。

「主任、頼みたいことがあるのですが」

 もう何度目かの頼みごとに、主任の表情が引き締まる。

「なに?」
「この二人――シルファとイマドを、向こうの病棟へ移して頂けませんか」

 シルファとイマドの表情は、変わらなかった。

「向こうの病棟ねぇ……」

 主任があごに手を当てて考え込む。

「部屋は空いていたはずです。出来ないと言うことは、ないはずですが」
「そうだけど、向こうは向こうの管轄だもの。訊いてみないことには、なんとも言えないわ」

 思った以上に病棟間の自治権?は、独立しているらしい。

 ――それを気にするタシュアではないが。

「では、作戦が失敗して子供たちに何かあった場合は、そちらで責任を取ってください」
「あのねぇ……」

 タシュアの毒舌に、主任が何度目かのため息をついた。

「あたしに言わないでよ。ともかく向こうの師長に、相談はするから。
 あとはその答え次第、それでいい?」

「まあ、いいでしょう」

 移動できない場合は多少攻撃範囲が減るが、その時はまた別の方法を取るだけのことだ。

「そしたら、訊いてくるわ。
 ――あ、これもらってくわね♪」

 最後に一言言い添えて、食料を手に主任が出て行った。

「――食いものだけは、忘れねぇの」

 イマドが残念そうにつぶやく。

「子供たちに渡るんです。少しは我慢するんですね」
「そりゃそうですけど……」

 先ほども食べていたというのに、またおなかが空いているらしい。

「これ片付いたら、なんか作っかな?」

 早くも事後のことを考えている。

「買ったほうが、早くないか?」

「それ以前に、調理室が閉まっているでしょうね。
 ――これは渡しておきます」

 ルーフェイアからの精霊を後輩に差し出す。
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