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第9話 至高の日常
開始 Episode:13
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「これで全てですね?」
「他には見当たらなかったわ。まぁ、見つけられなかったのかもしれないけど」
「そうですか」
包み?を受け取って、無造作に開く。
「だ、大丈夫? 爆発なんて……しないわよね」
「大丈夫です」
仮にもルーフェイアだ。
素人が触るだろう物を、危険なまま置くはずがない。
果たして中から出てきたのは、爆発などありえない物だった。
それどころか一見すると、ただの透き通った石としか思えない。
「何、これ?」
初めて目にしたのだろう。主任が首をかしげる。
「精霊です」
答えに、彼女が目を丸くした。
「へぇ、これが……」
確かに一般の人間が精霊を目にする機会は、少ない。
タシュアはクリスタル塊に似た状態の精霊を、手にとってかざしてみた。
(珍しいもののようですが……)
炎属性なら赤、聖属性なら白銀といったように、この状態の精霊はその属性の色をうっすらと帯びる。
だがこの精霊が帯びている色は、なんとも言いがたい色だった。
緑がかった紫、とでも言うのだろうか?
ともかく同じ紫でもシルファの澄んだ瞳の色と違い、かなり毒々しい雰囲気に仕上がっている。
「精霊って、嫌な色してるのね」
「他のはこんな色、してないですよ。
――にしても確かに、すげぇ色だな」
主任はもちろん、精霊を見るのは初めてではないはずのイマドも、同じような感想を漏らす。
「毒がありそうだな……」
「あるでしょうね」
聞いた瞬間シルファの伸ばしかけていた手が、熱いものに触れたかのように僅かに引っ込められた。
イマドのほうも妙に逃げ腰だ。
「先輩、それ、放したほうがいいんじゃ……」
「冗談のつもりですか? それにしては少々、出来がよくありませんね」
イマドがどういう意味で言ったかは分かっているが、隙を見逃すタシュアではない。
「それに精霊については、もう学院で教わっているはずですが」
「だって俺、まだ候補生でもないんですよ」
精霊の使用が認められているのは、上級傭兵か上級傭兵候補生だけだと言いたいらしい。
「そんなことを言っているようでは、永遠に候補生にはなれないでしょうね」
「ひでぇ……」
延々と続きそうなやり取りに口を挟んだのは、シルファだった。
「他には見当たらなかったわ。まぁ、見つけられなかったのかもしれないけど」
「そうですか」
包み?を受け取って、無造作に開く。
「だ、大丈夫? 爆発なんて……しないわよね」
「大丈夫です」
仮にもルーフェイアだ。
素人が触るだろう物を、危険なまま置くはずがない。
果たして中から出てきたのは、爆発などありえない物だった。
それどころか一見すると、ただの透き通った石としか思えない。
「何、これ?」
初めて目にしたのだろう。主任が首をかしげる。
「精霊です」
答えに、彼女が目を丸くした。
「へぇ、これが……」
確かに一般の人間が精霊を目にする機会は、少ない。
タシュアはクリスタル塊に似た状態の精霊を、手にとってかざしてみた。
(珍しいもののようですが……)
炎属性なら赤、聖属性なら白銀といったように、この状態の精霊はその属性の色をうっすらと帯びる。
だがこの精霊が帯びている色は、なんとも言いがたい色だった。
緑がかった紫、とでも言うのだろうか?
ともかく同じ紫でもシルファの澄んだ瞳の色と違い、かなり毒々しい雰囲気に仕上がっている。
「精霊って、嫌な色してるのね」
「他のはこんな色、してないですよ。
――にしても確かに、すげぇ色だな」
主任はもちろん、精霊を見るのは初めてではないはずのイマドも、同じような感想を漏らす。
「毒がありそうだな……」
「あるでしょうね」
聞いた瞬間シルファの伸ばしかけていた手が、熱いものに触れたかのように僅かに引っ込められた。
イマドのほうも妙に逃げ腰だ。
「先輩、それ、放したほうがいいんじゃ……」
「冗談のつもりですか? それにしては少々、出来がよくありませんね」
イマドがどういう意味で言ったかは分かっているが、隙を見逃すタシュアではない。
「それに精霊については、もう学院で教わっているはずですが」
「だって俺、まだ候補生でもないんですよ」
精霊の使用が認められているのは、上級傭兵か上級傭兵候補生だけだと言いたいらしい。
「そんなことを言っているようでは、永遠に候補生にはなれないでしょうね」
「ひでぇ……」
延々と続きそうなやり取りに口を挟んだのは、シルファだった。
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