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第9話 至高の日常

開始 Episode:04

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「鳥を降下させる。降りる用意を」
「了解」

 巨体が中庭も越えて、少し高度を下げる。
 瞬間、あたしは金具を外して屋上へ飛び降りた。そしてすぐに、懸垂降下の準備に入る。

 先輩がどうしたかは、見る暇はなかった。ともかく作業を早く済ませないといけない。

 あらかじめ用意しておいた金具を柵に噛ませて、その先に繋がるロープをなるべく真っ直ぐ下へ投げる。同時に柵を乗り越えて、降下用の金具とロープも繋いだ。

 一回だけロープを引いて、外れないか確かめる。

 ――よし。

 確信のある手ごたえが来て、あたしは即座に降下に入った。降りるのは2階分だから、すぐだ。
 目的の高さで昇降用の金具を操作して止まって、侵入に使う窓を確かめる。

 ――よかった、開いてる。

 可能なら開けておいてくれるという話だったけど、上手く時間が取れたらしい。

 もちろん開いてない時のために、ガラスを切る道具なんかは持っている。
 でも使わなくて済むほうが、ぜったい良かった。

 そっと窓に取り付いて、降下用の金具をロープから外す。
 その間にちらっと見た部屋の中は真っ暗で、ドアの外にも人の気配はない。

 少しほっとしながら、音を立てないようにしてすべり込んだ。
 次いでドアから死角になる位置に移動、気配を殺して――もっともこれはいつもだけど――周囲を覗う。

 病院の中は少しざわついていた。外の爆発音と投光器が消えたのとで、さすがに犯人グループが警戒してるらしい。

 けどそれも、待つうちに引いていった。
 「爆薬を暴発させるなんざ、シエラの傭兵隊も大したことないよな」。そんな声が、かすかに聞こえてくる。

 ――いいかな?

 そっと背中の布包みを降ろして、ほどいた。
 バックパックにしなかったのは、この方が隠す手間がないからだ。

 中身を全部出して、布を丁寧に畳む。
 そこに用意しておいた精霊とメモを挟んで、枕元の台の上に置いた。

 上手くいけば、看護士さんが見つけてイマドたちに届けてくれるだろう。
 それにこれだけなら、万が一犯人たちが見つけても、使い道も意味も分からない。

 それから、あたしは着替えに入った。

 まず暗緑色の、フード付きの上着とスパッツを脱ぐ。
 あとは上に、持ってきた丈が長めの長袖Tシャツとガウンを羽織るだけだ。

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