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第9話 至高の日常
策謀 Episode:10
しおりを挟む「だから……あたしたちは普段、ナースステーションの隅に犯人と一緒にいて、呼ばれた時なんかに病室へ行くだけなのよね。
でも一緒にいたりしたら、危ないわけでしょ?」
「確かにそうですね」
先輩が少し考え込む。
「――職員の控え室かなにかは、ありませんか?」
「狭いけど、ナースステーションの隣にあるわ」
「では何か口実を設けて、できる限り全員そこにいるようにしてください。
それで、ほぼ安全が確保されるはずです」
主任がほっとした表情になった。
まぁ誰だって、犯人の巻き添え食らってケガするのはゴメンだろう。
「さすがに全員はムリだろうけど……なるべくみんなで、引っ込めるようにしてみるわ」
「そうしてください。
もっとも、必ず突入すると決まったわけではありませんがね」
「なんだ、そうならそうと言ってよ。まったくびっくりさせるんだから」
最後の言葉に、主任、気が抜けたらしい。
――ウソだけどな。
素人連中が「突入」なんて聞くと、ビビって素振りが変わる。そっから犯人連中にバレるの避けるのに、先輩はこう言っただけだ。
「私は最初から、必ず突入するなどとは言っていません。『可能性がある』とだけ、言ったはずですがね」
しかもタシュア先輩、突っ込むし。
けどもう、主任は怒るのもめんどくさくなったらしかった。
「まったくもう。
――ともかく分かったわ。師長に伝えて、できる限りのことはする」
「お願いします。
それから、空いている病室を教えて頂けますか?」
「空き部屋? そりゃあるけど……どうして?」
いきなり飛んだ話の内容に、主任ついてこれなかったらしい。
タシュア先輩が説明する。
「子供たちの安全を確保するために、ひとり窓から潜入します。ですがまさか、入院患者がいる部屋からは入れませんので」
主任がますます、困惑した表情になった。
「ちょっと待ってよ。あたしたちもあなたたちも入れないのに、どうやってチビちゃんたちの所まで行くの?
その人が来ても、ムダだと思うんだけど……」
「来るのは12歳の少女ですから」
「じゅ――」
「静かに。見張りに聞こえかねません」
また主任を、タシュア先輩が黙らせた。
「年齢こそ12ですが、彼女はシエラの上級傭兵並みか、それ以上の実力の持ち主です。入れる部屋さえ分かれば、あとは自力で全てやってのけます」
これ、目の前で言ってやりゃいいのに。
主任がまたため息をついた。
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