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第9話 至高の日常
緊迫 Episode:04
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「なんだかあの子ここにいるんですけど、こっちに話があるらしくて。
寮の部屋がいっしょであの子よく知ってますから、外へ出て聞いてきちゃダメでしょうか?」
「そういうことなら許可しよう。ただ、手短にするんだ」
「了解」
急いで外に出ると、案の定この子が困ったふうに辺りを見回してた。
「ルーフェ、どしたの?」
「――ロア先輩?!」
まさかあたしがいるなんて思ってなかったんだろう、思いっきりびっくりした表情。
「あ~うんとね、今日ってばいきなり実地試験。
それよりなんかあったの? キミが野次馬してるなんて、ちょっと思えないし。あとさ、タシュアとシルファ先輩どこかな?」
「あの、実は……」
ルーフェに途中まで事情を訊いたとこで、あたしも思いっきりびっくりした。
「あのタシュアが、倒れたっての?!」
「……はい」
こっくりとこの子がうなずく。
――なんだかなぁ。
竜が逆立ちして海水浴してるってほうが、よっぽど信じられる。
けどルーフェは嘘はつかない。というかこの子、つけない。
「まったく、あいつに取り付くなんて、どんな風邪なんだか。
けどどうしてキミだけ、ひとりでいるの?」
「それが……」
この子の話の続きを聞いて、あたしは納得した。
「タイミングよくルーフェだけ、締め出されちゃったんだ」
「そうなんです……」
いつも大人しいルーフェだけど、今日はとりわけ元気がないみたいだ。
まぁ、無理ないかなぁ……。
自分ならともかく、大好きな彼氏が人質じゃ、いてもたってもいらんないだろうし。
「――心配?」
「……はい……」
「だろうねぇ」
タシュアなんか放っておいたってどうってことないだろうけど、この子の彼氏は上級とかじゃない。
「まぁでも、タシュアがいるんだから大丈夫だよ、たぶん」
癪に障るんだけど。
けどあいつ、あの性格やら毒舌やらはともかくとして、実力だけは一級品なんだよね。
ただどっちにしても、ここでずっと立ち話ってわけにはいかない。
「そしたらさ、その話、もう一回してもらっていいかな? みんなのとこで」
「あ、はい」
またこっくりうなずいたあと、歩き出したあたしの後ろを、この子がヒヨコみたいにくっついてきた。
――ホント、素直でカワイイよね~♪
タシュアに爪の垢でも煎じて、一年くらい飲ませたいかも。
ともかく一旦、待機してたとこまで戻る。
寮の部屋がいっしょであの子よく知ってますから、外へ出て聞いてきちゃダメでしょうか?」
「そういうことなら許可しよう。ただ、手短にするんだ」
「了解」
急いで外に出ると、案の定この子が困ったふうに辺りを見回してた。
「ルーフェ、どしたの?」
「――ロア先輩?!」
まさかあたしがいるなんて思ってなかったんだろう、思いっきりびっくりした表情。
「あ~うんとね、今日ってばいきなり実地試験。
それよりなんかあったの? キミが野次馬してるなんて、ちょっと思えないし。あとさ、タシュアとシルファ先輩どこかな?」
「あの、実は……」
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「あのタシュアが、倒れたっての?!」
「……はい」
こっくりとこの子がうなずく。
――なんだかなぁ。
竜が逆立ちして海水浴してるってほうが、よっぽど信じられる。
けどルーフェは嘘はつかない。というかこの子、つけない。
「まったく、あいつに取り付くなんて、どんな風邪なんだか。
けどどうしてキミだけ、ひとりでいるの?」
「それが……」
この子の話の続きを聞いて、あたしは納得した。
「タイミングよくルーフェだけ、締め出されちゃったんだ」
「そうなんです……」
いつも大人しいルーフェだけど、今日はとりわけ元気がないみたいだ。
まぁ、無理ないかなぁ……。
自分ならともかく、大好きな彼氏が人質じゃ、いてもたってもいらんないだろうし。
「――心配?」
「……はい……」
「だろうねぇ」
タシュアなんか放っておいたってどうってことないだろうけど、この子の彼氏は上級とかじゃない。
「まぁでも、タシュアがいるんだから大丈夫だよ、たぶん」
癪に障るんだけど。
けどあいつ、あの性格やら毒舌やらはともかくとして、実力だけは一級品なんだよね。
ただどっちにしても、ここでずっと立ち話ってわけにはいかない。
「そしたらさ、その話、もう一回してもらっていいかな? みんなのとこで」
「あ、はい」
またこっくりうなずいたあと、歩き出したあたしの後ろを、この子がヒヨコみたいにくっついてきた。
――ホント、素直でカワイイよね~♪
タシュアに爪の垢でも煎じて、一年くらい飲ませたいかも。
ともかく一旦、待機してたとこまで戻る。
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