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第9話 至高の日常

動揺 Episode:11

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 辺りはもう十分に黄昏れきっていて、建物は投光器で照らし出されている。

 もどかしかった。
 たったこれだけの距離しかないのに、何もできない。

「ほんとに、待つだけだね……」
「そのようですね」

 何故だろう?
 ちゃんと相槌をうってもらえて、少しだけほっとする。

 ただ本当のことを言えば、上手く中と連絡が取れても傭兵隊の先輩たちが来ても、すぐには事態は動かないはずだ。
 もちろん最後は突入だろうけど、それがいつ頃になるのか――なんの見当もつかない。

「もしよろしければ、一旦セーフハウスの方へ移動されてはいかがでしょうか。
 まだこの時期、夜は冷えます」

 ドワルディがまた、あたしを気遣ってくれる。
 でも、それを受け入れられなかった。

「ううん、ここでいい」

 何も出来ないとわかっていても、ここにいたい。

「かしこまりました。
 では、誰かに上着でも持たせましょう」

「――ありがと」

 少しだけ自分が微笑むのが分かった。この言葉のほうが、どんな服よりあったかい。
 でも、現実は……。

 その時、ドワルディの表情が少し変わった。

「どうしたの?」
「学院の傭兵隊が、到着したようですね」
「もう?」

 けど辺りを見回しても、それらしい人影は見えない。

「どこに……?」
「病院の敷地内ではありません。少し離れた、大型店の駐車場を利用したようです」

 報道や警察、それに野次馬でごった返すこの辺は、避けたんだろう。

「えっと、じゃぁ……あっち?」

 彼に確認しながら急いで移動すると、確かに何両もの車両が、少し離れたお店の駐車場に停まっていた。

 紺を基調にした、何台もの大型車両。緑を基調とする、本校のものじゃない。
 本島から海を越えて車両を出すのは大変だから、ケンディク市内にある分校の車両を、借りてるんだろう。

「思った以上に早かったですな」
「うん」

 自分の声が、少しだけ声が弾んだ。

「――あたし、行ってくる」

 傭兵隊の先輩たちに、いろいろ話さなきゃいけない。

「かしこまりました。この辺りで待機しておりますので、何かありましたら声をかけてください」
「……ありがと」

 ドワルディにお礼を言って、あたしは歩き出した。
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