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第9話 至高の日常

動揺 Episode:03

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「もうご存知かもしれませんが、犯人グループは『森の虎』と名乗る、ワサールのレジスタンスのひとつです。先ほど犯行声明も出ました」

「うん、ついさっき聞いたわ。
 後は何か……分かったこと、ある?」

 シュマーの情報網は、学院や政府より早い。詳細がある程度でも、入っていないわけはなかった。

「既にユリアス政府は、ロデスティオ政府と秘密裏に交渉に入ったようです。
 ただ進展の程は、はかばかしくないようでして」

「そう……」

 レジスタンスに対しては、常に厳しい態度を取ってきたロデスティオ政府だ。
 いくら国外で事件を起こされたからといって、そう簡単に折れるとも思えない。

 だいいちテロに対しては、一度折れたら終わりだ。

 最初は人質を救うための他愛ない譲歩でも、味をしめたテロ組織に次々を事件を起こされて、収拾がつかないほど規模がエスカレートしていく。
 人質は全員救出、犯人は死刑――国によってはこれは終身刑――が、対テロの基本的なやり方だった。

「人質は……どのくらい?」

「公式発表では病棟の患者が合計で68名、看護士が31名。それにドクターが若干名です。
 あとは見舞い客が多数、といったところかと」

 これにはあたしも呆然とした。

「それじゃ、100人以上じゃない!」
「さようでございます」

 これほどの事件は恐らく、この国始まって以来のはずだ。

「開放の交渉、どうなってるの?」

「こちらはまだ、始まってすらおりません。こういった交渉自体、この国にとっては初めての経験だからでしょう。
 ――だからこそ、犯人グループも狙ったのでしょうが」

「でも、だからって……!」

 あの占拠されたフロアには、小児科もあった。
 だから当たり前だけど、具合の悪い子どもたちがたくさん入院している。

 イマドや先輩たちも心配だけど、小さい子がどうなるかが、もっと心配だった。

「お気持ちの程は良く分かります。ですが今のところ、時間待ちかと」
「そう……だね……」

 ドワルディの言うことが正しい。

 ただケンディク軍にはこういったテロを想定した特殊部隊はないから、シエラに要請がかかるのは間違いなさそうだった。

 ふっと思いついて、訊ねてみる。
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