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第9話 至高の日常
動揺 Episode:01
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◇Rufeir
病院の建物の中へは、どうやっても入れなかった。
――どうしよう。
あたしがここへ戻ってから、だいだい1時間以上。辺りはもう薄暗くなってきて、焦りだけがつのる。
でもなにも出来なくて、あたしはその辺りをうろうろするだけだった。
それにそろそろ、ここにいるのも限界だ。
事の大きさを知った政府や警察関係者が続々と詰めかけていて、一般市民は締め出されそうな気配になっている。
そっとあたしは場所を移動した。
警備が厳しくなってきた真正面の玄関付近を避けて、報道陣でごった返している辺りへ紛れ込む。
おそらくこの場所が、いちばん情報に近い。
「え~、新しい情報が入りました。
この事件に関して、犯行声明があった模様です」
リポーターの言葉に、思わずそっちへ振り返った。
いったい、どこが……。
「犯人グループは『森の虎』と名乗っており、ロデスティオの収容所に入れられている仲間の即時開放と、そのメンバー及び自分たちの身の安全を要求しているようです。
この『森の虎』というグループはロデスティオ領ワサール地区に多い、同地区の独立を要求しているレジスタンスのなかでも、過激なグループのひとつで――」
報道のおかげで、おおよそのことが分かる。
ワサールは今でこそロデスティオ領だけど、ほんの十五年ほど前までは、ちゃんとした独立国だった。
それを軍事大国化の道をたどっていたロデスティオが、突然侵攻して併合してしまったのだ。
そういう経緯だから、今でもワサールの人たちはロデスティオを快くは思っていなくて、反政府活動が盛んだ。
当然テロも多くて、いつ行っても警戒が厳しかった。
――だからこそ、このユリアスなんだろうけど。
海向こうのワサールなんかと比べると、この国は格段に平和だ。
確か独立の時も大規模な戦闘はなかったし、今でも観光客が夜、町を歩けるほど治安がいい。
でもそれは逆に、危険に対しての警戒の薄さを産んでいた。そこが狙われたんだろう。
「そこ、下がりなさい!」
もう一段警備が厳しくなったのか、警察官が報道陣を下がらせ始めた。
カメラやマイクを持った人たちが、しぶしぶ従う。
「お嬢ちゃん、君もお家へ帰りなさい。いいね?」
通りすがりの野次馬と間違われて――否定はできないけど――あたしも敷地の外へ出されそうになった。
病院の建物の中へは、どうやっても入れなかった。
――どうしよう。
あたしがここへ戻ってから、だいだい1時間以上。辺りはもう薄暗くなってきて、焦りだけがつのる。
でもなにも出来なくて、あたしはその辺りをうろうろするだけだった。
それにそろそろ、ここにいるのも限界だ。
事の大きさを知った政府や警察関係者が続々と詰めかけていて、一般市民は締め出されそうな気配になっている。
そっとあたしは場所を移動した。
警備が厳しくなってきた真正面の玄関付近を避けて、報道陣でごった返している辺りへ紛れ込む。
おそらくこの場所が、いちばん情報に近い。
「え~、新しい情報が入りました。
この事件に関して、犯行声明があった模様です」
リポーターの言葉に、思わずそっちへ振り返った。
いったい、どこが……。
「犯人グループは『森の虎』と名乗っており、ロデスティオの収容所に入れられている仲間の即時開放と、そのメンバー及び自分たちの身の安全を要求しているようです。
この『森の虎』というグループはロデスティオ領ワサール地区に多い、同地区の独立を要求しているレジスタンスのなかでも、過激なグループのひとつで――」
報道のおかげで、おおよそのことが分かる。
ワサールは今でこそロデスティオ領だけど、ほんの十五年ほど前までは、ちゃんとした独立国だった。
それを軍事大国化の道をたどっていたロデスティオが、突然侵攻して併合してしまったのだ。
そういう経緯だから、今でもワサールの人たちはロデスティオを快くは思っていなくて、反政府活動が盛んだ。
当然テロも多くて、いつ行っても警戒が厳しかった。
――だからこそ、このユリアスなんだろうけど。
海向こうのワサールなんかと比べると、この国は格段に平和だ。
確か独立の時も大規模な戦闘はなかったし、今でも観光客が夜、町を歩けるほど治安がいい。
でもそれは逆に、危険に対しての警戒の薄さを産んでいた。そこが狙われたんだろう。
「そこ、下がりなさい!」
もう一段警備が厳しくなったのか、警察官が報道陣を下がらせ始めた。
カメラやマイクを持った人たちが、しぶしぶ従う。
「お嬢ちゃん、君もお家へ帰りなさい。いいね?」
通りすがりの野次馬と間違われて――否定はできないけど――あたしも敷地の外へ出されそうになった。
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