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第9話 至高の日常

急転 Episode:08

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 だが、タシュアは指摘した。

「大丈夫でしょう。婦長に許可を取るとは言っていましたが、彼女はこの病棟の主任ですから。
 それに看護士が病室で何をするかまで、彼らもチェックはしきれないでしょうからね」

「あ、そうか……」

 どこまでも見透かしたかのような冷静さに、舌を巻く。
 そして、気が付いた。

「どうして、彼女が……この病棟の主任だと、分かったんだ?」
「名札にそう、書いてありましたが」
「そ、そうだったか?!」

 どこを見ていたのかと、自分が少々情けなくなる。

「ええ。
 シルファも緊張するのは分かりますが、イマドの図太さを少々見習った方がいいかもしれませんね。
 ――いい加減にしてはどうです」

 最後の一言は、私ではなくイマドへ向けてだ。

「だいじょぶです。ちゃんと先輩の分、残ってますから」

 タシュアの突っ込みに、けろりとイマドが答えた。どうも私たちがいろいろやっている間に、しっかりサンドイッチを食べていたらしい。

「まったく、少しは状況をわきまえなさい」
「ですけど、腹減って」

 言いながらこの後輩は、またひとくち口に運んだ。

 ――確かに図太い。

 学院生と言うことを差し引いても、この状況で食事が出来る人間は少ないはずだ。

 というより、ひとりでさっさと食べていたり、さっきのように病院のベッドで寝ていたりということ自体が、かなり珍しいだろう。
 見かけからは、そんなことをするようには見えないのだが……。

 そうこうしているうちに、手に別の点滴を持って先ほどの看護士が戻ってきた。

「またですか」

 よほど点滴に嫌気が差しているのか、タシュアは半分拒否状態だ。

「してあげてもいいんだけどね、これは残念ながらダミーよ」

 手ぶらで病室へ行けば怪しまれるからだと、この看護士は言った。

「で、師長には了解取ったわ。何をどう知りたいの?」
「知りたい内容は、先ほども言いましたが」

 タシュアは「事実を言ったまで」という顔をしているが、看護士のほうはこの答えに気を悪くしたらしい。
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