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第9話 至高の日常
急転 Episode:02
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「美味しいだろ?」
「はい。そうしたら――これ、いただけますか?」
「もちろん」
にこにこしながらお兄さんが、濃いオレンジ色のちょっと細長くて丸い果物を手にして――あたしに顔を向けた。
「って、ひとり分でいいのかい?」
「え、えっと……」
また悩む。
イマドからは頼まれたから間違いないけど、先輩たちは……?
買っていっても買っていかなくても何か言われそうで、どうしていいか分からなかった。
「そんなに悩まなくたって。そうだな、全部で何人いるんだい?」
「4人です」
これは間違いない。
「お嬢ちゃんも入れて、だね?」
「はい」
答えを聞いて、このお兄さんがうなずいた。
「だったら、4つ持ってきゃいいさ。足りないよりは、余るほうが世話がないからね」
「あ……♪」
納得する。
「じゃぁ、すみません、4人分……」
「ほいきた。ちょっとだけ待っててくれるかい」
「はい」
手際よく、お兄さんが作り始めた。
目の前で、オレンジ色のジュースが出来ていく。
「持って帰るんだろ? 今ちゃんと、入れてあげるよ」
「すみません、ありがとうございます」
ふたのついた紙コップを4つ、倒れないようにして袋に入れてくれた。
「気をつけてな」
「はい」
受け取ってお金を払って、病院のほうへと歩き出す。
ただ行きと違って荷物があるから、ゆっくりだ。
――イマド、嫌だって言わないかな?
ちょっとだけ心配する。
だけどお店で飲ませてもらったのは、おいしかったし……。
でも最後の角を曲がって病院が目に入った瞬間、そんなことを考えていられなくなった。
門のあたりに、人だかりが出来ている。
しかもその人たちの中には、パジャマ姿が混じっていた。
普通の人がそんな格好で、外を歩くわけはない。
つまりはこの病院に入院していた、患者さんだ。
できるかぎり急いで、病院へ戻る。
正門の辺りはもう、たくさんの人でごったがえしていた。
その他にも続々と、中から患者さんが――中には車椅子や移動寝台で――外へ出てくる。
「はい。そうしたら――これ、いただけますか?」
「もちろん」
にこにこしながらお兄さんが、濃いオレンジ色のちょっと細長くて丸い果物を手にして――あたしに顔を向けた。
「って、ひとり分でいいのかい?」
「え、えっと……」
また悩む。
イマドからは頼まれたから間違いないけど、先輩たちは……?
買っていっても買っていかなくても何か言われそうで、どうしていいか分からなかった。
「そんなに悩まなくたって。そうだな、全部で何人いるんだい?」
「4人です」
これは間違いない。
「お嬢ちゃんも入れて、だね?」
「はい」
答えを聞いて、このお兄さんがうなずいた。
「だったら、4つ持ってきゃいいさ。足りないよりは、余るほうが世話がないからね」
「あ……♪」
納得する。
「じゃぁ、すみません、4人分……」
「ほいきた。ちょっとだけ待っててくれるかい」
「はい」
手際よく、お兄さんが作り始めた。
目の前で、オレンジ色のジュースが出来ていく。
「持って帰るんだろ? 今ちゃんと、入れてあげるよ」
「すみません、ありがとうございます」
ふたのついた紙コップを4つ、倒れないようにして袋に入れてくれた。
「気をつけてな」
「はい」
受け取ってお金を払って、病院のほうへと歩き出す。
ただ行きと違って荷物があるから、ゆっくりだ。
――イマド、嫌だって言わないかな?
ちょっとだけ心配する。
だけどお店で飲ませてもらったのは、おいしかったし……。
でも最後の角を曲がって病院が目に入った瞬間、そんなことを考えていられなくなった。
門のあたりに、人だかりが出来ている。
しかもその人たちの中には、パジャマ姿が混じっていた。
普通の人がそんな格好で、外を歩くわけはない。
つまりはこの病院に入院していた、患者さんだ。
できるかぎり急いで、病院へ戻る。
正門の辺りはもう、たくさんの人でごったがえしていた。
その他にも続々と、中から患者さんが――中には車椅子や移動寝台で――外へ出てくる。
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