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第9話 至高の日常

急転 Episode:01

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 ◇Rufeir

 あたし、なにやってるんだろ……。
 イマドに頼まれたものを忘れてしまうなんて、自分で自分が情けなくなる。

 ともかくシルファ先輩と別れたあと、急いで下へ行く昇降台に乗って、病院を出た。
 それから考え込む。

 ――どこへ、行こう。

 イマドやシルファ先輩みたいに、おいしいお店に心当たりがない。

 しばらく考えて、結局サンドイッチを買ったスタンドに行くことにした。
 病院からスタンドまでは、歩いて五分もない。

「あの……」
「ありゃ、さっきのお嬢ちゃんじゃないか」

 お店の人は、あたしを覚えていてくれた。もっともついさっきだし、いちどに五人前も買ったから、覚えてて当然だろう。

「お姉さんはどうしたんだい?」
「えっと、先輩はもう、戻ったんですけど……あたし、飲み物買い忘れて……」
「あれ、お姉さんじゃなかったのか」

 どうもこのお兄さん、あたしとシルファ先輩を姉妹と勘違いしていたらしい。

 ――似てないのに。

 落ち着いている先輩と違って、あたしの髪はどうしても目立つ。
 あんなふうだったら、いいのに……。

「それで、何がいいのかな?」
「え? あ、えっと……」

 また考え込む。
 イマドは「フレッシュジュース」って言ってたけど、どれがいいのか分からなかった。

「あの、すみません、どれがいいんでしょう……?」
「ありゃりゃ、そりゃ困ったな」
「ご、ごめんなさい!」

 泣きたくなる。
 どうしてあたし、いつもこう……。

 けど自分が情けなくてうつむいていたら、このお兄さんが助け舟を出してくれた。

「ほ、ほら、そんな顔しないで。
 ――えーと、このお勧めなんかどうだい?」

 並んでいる写真のひとつを、指差してくれる。

「あの、これ……なんですか?」

 色はちょっと濃い目のオレンジだけど、普通のオレンジジュースじゃなさそうだった。

「味見してみるかい?」
「すみません」

 コップにほんの少しだけ、飲ませてもらう。
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