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第9話 至高の日常

不審 Episode:11

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「どれにしよう……?」

 ひたすら悩む。
 あたし自身は、どれでもいいんだけど……。

 しばらく悩んでいると、シルファ先輩が待ちくたびれたみたいで注文を始めた。

「すみません、これと、それと……」

 タシュア先輩の分だけじゃなくて、イマドの分まで頼んでくれる。

「これだけあれば、足りるだろう?」
「たぶん、足りると思います」

 なにしろ先輩が頼んでくれたサンドイッチは、5人前くらいある。
 それを少し待って作ってもらって、持ち帰り用の箱に詰めてもらった。

「早く帰ろう。きっとタシュアもイマドも、お腹を空かせているぞ」
「はい」

 急ぎ足で病院まで戻る。

「タシュアが、逃げ出してないといいんだが……」
「どうでしょう……?」

 こればかりは、行ってみないと分からない。
 ただタシュア先輩は「約束する」と言っていたから、待っているんじゃないかと思った。

「診療が終わってるのに……人が、多いな」
「お見舞いの人じゃないですか?」

 シルファ先輩の言うとおり、確かに病院内は人が多い気がした。
 けどここは500床近い大きな病院だから、お見舞いの人だけでもかなりの人数になるんだろう。

 先輩の病室にいちばん近い昇降台まで行って、ボタンを押した。

 病院はどこもそうだけれど、2台並んだ昇降台が2箇所にあるから、あまり待たない。
 そのまま他のお見舞いらしい人たちと乗り合わせて、一番上の7階――8階は機械室で立ち入り禁止――で降りた時。

「――あっ!」

 急に声をあげたあたしに、シルファ先輩が怪訝そうな顔をした。

「どうしたんだ?」
「その、あたし……飲み物、頼まれてたのに……」
「そういえば、そうだったな」

 先輩も思い出す。

「あたし、今から行ってきます」
「だが、ここまで戻ってきて……」
「でも――」

 イマドががっかりする顔を、見たくなかった。

「あの、やっぱり行ってきます!」
「そうか? そうしたらイマドには、私から言っておこう」
「すみません、ありがとうございます」

 お礼だけ言って、あたしはもう一度、下へ向かう昇降台へ乗り込んだ。
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