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第9話 至高の日常

不審 Episode:10

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「先輩、いちおう確かめますか?」
「そうだな」

 途中の十字路で、二手に分かれる。

 ついて来ていた気配は、シルファ先輩のほうへ向かった。
 あたしも気配を殺して逆戻りして、今度は後ろから追う形を取る。

 後ろからついてきていたのは、やっぱり男の人だった。

 ――あれ?

 途中の曲がり角でちらっと見えた顔に、見覚えがある。
 やっぱり学院の先輩で……でも、シルファ先輩やタシュア先輩よりは、年下だったはずだ。

 だとすると、何か用なんだろうか?

 思い切って近づいた。ただ気配は殺したままだ――というより、気配を隠すのが染み付いてしまっている――から、この先輩は気づかない。

「あの――」
「うわっ!」

 いきなり声をかけたのがまずかったのか、ひどくびっくりされた。

「す、すみません、おどかすつもりじゃ……」
「べ、べつに僕は何も……」

 ――この先輩、何を慌ててるんだろう?

 何か困ることがあるとも、思えないけど……。
 やりとりに気づいて、シルファ先輩も戻って来た。

「大丈夫か?」
「あ、はい」
「そうか。
 ――何か、用なのか?」

 シルファ先輩が尋ねると、この男の先輩がすごい勢いで首を振る。

「なんでもない、なんでもないですっ!」

 それから猛スピードで、駆け去ってしまった。

「――? なんだ、あれは?」
「なんでしょう……?」

 また二人で首をかしげたけど、やっぱり理由は分からずじまいだ。

「よく分からないが……ともかく、食べるものを買って帰らないか」
「そうですね」

 あの先輩のことは、保留にする。

「そう言えば、ずっとルーフェイアが言ってた気配は……あれとは違うのか?」
「はい、違います」

 きっぱりとあたしは答えた。あの気配はもっと殺気立っていて……ともかく、間違えようがない。

「そうか。
 ――ああ、そこの店が、美味しいんだ」

「ほんとですか?」

 シルファ先輩に連れられるまま、ちいさなスタンドの前まで来る。

「うわぁ♪」

 確かに店の前には、美味しそうなサンドイッチの写真がたくさん貼られていた。
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