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第9話 至高の日常

不審 Episode:02

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 まぁこの場合、タシュア先輩のほうがめいっぱい惚れてて、言うこと聞いてるだけかもしんねぇけど。
 どっちにしたってこれが出来るのは、世界広しと言えどもシルファ先輩ひとりだろう。

 ――タシュア先輩を強引に一泊入院させたのも、この先輩だし。

「だいいちお医者さんも言ってたじゃないか、たかが流感でも甘くみるなと」

 シルファ先輩、よほど心配らしい。いろいろ理由まで並べてる。

 けど一応悪性の流感らしいから、確かに用心したほうがいいだろう。
 甘く見てると大の男でも2、3日でくたばることがあるって、叔父さんから聞いたことがある。

「でも……もう流行、終わりましたよね……?」

 ルーフェイアのやつが不思議そうに考え込んだ。

 確かにこいつの言うとおり、いちばんひどかった時期はとうに過ぎてる。
 今年はあっちもこっちも休講やらクラス閉鎖で大騒ぎだったけど、もういいかげん下火でしばらく話も聞いてない。

「それは……タシュアだし……」
「どういう意味ですか」

 こいつとシルファ先輩とのやりとりに、またタシュア先輩が突っ込んだ。
 にしても、よくこれだけ突っ込むネタがあるっつーか、見つけるっつーか……。

 ――ってそれ以前に俺、なんだってこんな場所にいるんだか。

 まぁ、とことこルーフェイアのやつが、先輩たちにくっついてっちまったんだけど。

「どっかで食いモンでも、買ってくっかな」

 なんとなく言う。

「また、食べるの……?」

 聞いたルーフェイアのやつが、目を丸くした。

「しょうがねぇだろ、腹減るんだから」
「――私も行きますかね」
「タシュアっ!!」

 起きてどうにか出て行こうとしたタシュア先輩に声が飛んで、またベッドの中へ逆戻りだ。

「なんでそう、抜け出そうとするんだ!」
「ですから、最初から必要ないと言っていますが?」
「そんなワケないだろう!」

 ず~っとこの調子だし。

「タシュアが抜け出さないなら、ちゃんと私が買ってくる」
「私がいつ、抜け出すと言いました」

 けっこう聞いてると面白い。

「今、抜け出そうとしたじゃないか!」
「買いに行こうとしただけです」

 ほとんど夫婦喧嘩だ。
 そこへルーフェイアが、おそるおそる割って入った。

「あの、でしたら……あたしが、買いに行きますけど……」
「遠慮します」

 間髪入れずにタシュア先輩が断る。

 ――気持ちは分かっけどな。

 なにせルーフェイアときた日にゃ、ウソみてぇな食べ物音痴だ。
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