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第9話 至高の日常
遊戯 Episode:10
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「ルーフェイア、本当に、大丈夫なのか?」
シルファからも言われて、ルーフェイアがひどく悲しげな表情になった。
(――なにが悲しいのやら)
なにしろタシュアにしてみれば、泣いたり嘆いたりしてもことは運ばない、と言うのが信条だ。
だが優しいシルファは、そうは思わなかったらしい。
「いや、その――今までそうしていたなら、大丈夫なんだろうが」
慌てて言い繕っている。
ルーフェイアが寂しげに微笑み、その手の上にクリスタル状のものが二つ現れた。
所有者が決まってる精霊を外すと、こういう形をとる。
――それにしても。
「二体も憑依させていたのですか」
「――はい」
憑依させる精霊の数が増えれば、それだけ負担も増すのだ。
(よくまぁ、平気ですこと)
そのタシュアの前で、少女はやはり悲しそうに、石化した精霊を見つめるだけだった。
雰囲気に耐えかねたのだろう、シルファが口を開く。
「その精霊は……炎系か?」
「えっと、炎系の……サラマンダーなんです」
シュマーなだけあって、あまり聞かない名前の精霊だった。
「サラマンダー? 珍しいな、中級か?」
「えっと、多分そうだと、思うんですけど……」
しかも分類まで適当らしい。
とはいえ分類は人が設けたものだ。すべての精霊が当てはまるとは限らない。
「こっちはこないだの、雷呼ぶヤツだろ?」
薄紫がかったほうのクリスタルを指差して、イマドが訊いた。
いつも一緒にいるがゆえに、何を持っているか把握しているのだろう。
「うん」
ルーフェイアのほうもうなずく。
ただ次の台詞は、少々予想外だった。
「イマドも……要る?」
貴重なはずの精霊を差し出して、呆れるようなことを言い出す。
「いいっていいって」
「でも、家にいっぱい……余ってるし……」
「――マジかよ」
イマドがため息をついた。
「なんと言うか……凄いな」
シルファもさすがに度肝を抜かれたようだ。
「まったく、あなたの家と来た日には。
ですがそれより、早く始めたほうがいいと思いますがね」
「――あ」
ひとり冷静だったタシュアが指摘すると、シルファが妙な声を出した。
改めて思い出したのだろう。
「ルーフェイア、ほら、早くいちばん軽いの持ってこいって」
「……うん」
イマドにうながされて少女も精霊を仕舞い込み、とことことボールを取りに歩き出した。
が、その足取りが何かおかしい。
シルファからも言われて、ルーフェイアがひどく悲しげな表情になった。
(――なにが悲しいのやら)
なにしろタシュアにしてみれば、泣いたり嘆いたりしてもことは運ばない、と言うのが信条だ。
だが優しいシルファは、そうは思わなかったらしい。
「いや、その――今までそうしていたなら、大丈夫なんだろうが」
慌てて言い繕っている。
ルーフェイアが寂しげに微笑み、その手の上にクリスタル状のものが二つ現れた。
所有者が決まってる精霊を外すと、こういう形をとる。
――それにしても。
「二体も憑依させていたのですか」
「――はい」
憑依させる精霊の数が増えれば、それだけ負担も増すのだ。
(よくまぁ、平気ですこと)
そのタシュアの前で、少女はやはり悲しそうに、石化した精霊を見つめるだけだった。
雰囲気に耐えかねたのだろう、シルファが口を開く。
「その精霊は……炎系か?」
「えっと、炎系の……サラマンダーなんです」
シュマーなだけあって、あまり聞かない名前の精霊だった。
「サラマンダー? 珍しいな、中級か?」
「えっと、多分そうだと、思うんですけど……」
しかも分類まで適当らしい。
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「こっちはこないだの、雷呼ぶヤツだろ?」
薄紫がかったほうのクリスタルを指差して、イマドが訊いた。
いつも一緒にいるがゆえに、何を持っているか把握しているのだろう。
「うん」
ルーフェイアのほうもうなずく。
ただ次の台詞は、少々予想外だった。
「イマドも……要る?」
貴重なはずの精霊を差し出して、呆れるようなことを言い出す。
「いいっていいって」
「でも、家にいっぱい……余ってるし……」
「――マジかよ」
イマドがため息をついた。
「なんと言うか……凄いな」
シルファもさすがに度肝を抜かれたようだ。
「まったく、あなたの家と来た日には。
ですがそれより、早く始めたほうがいいと思いますがね」
「――あ」
ひとり冷静だったタシュアが指摘すると、シルファが妙な声を出した。
改めて思い出したのだろう。
「ルーフェイア、ほら、早くいちばん軽いの持ってこいって」
「……うん」
イマドにうながされて少女も精霊を仕舞い込み、とことことボールを取りに歩き出した。
が、その足取りが何かおかしい。
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