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第9話 至高の日常

日常 Episode:15

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 ――けどあれを、「きちんと」って言うか、普通?

 ルーフェイアにやったのは、けっこう前からあるトレーディングカードの一枚だ。何年か前から学院の中で、かなり流行ってる。

 で、勝負して勝てばもらえんだけど、こいつこないだタシュア先輩に負けやがった。

 じつ言やルーフェイアは、そんなに弱くなかったりする。
 クラス内じゃ、屈指の強さだ。

 なんでも同室のロア先輩がめっぽう強い人だったとかで、カードを一揃いもらった上に、一から教えてもらったらしい。

 それにこいつも飲みこむまではともかく、分かっちまえば今度は忘れない性格?してる。
 ルールも今じゃかなり複雑でもきっちり把握して、しっかり利用すっから始末に追えない。

 けど、タシュア先輩となるとなぁ……。

「先輩相手にルーフェイアが、勝てるわきゃないじゃないですか」

 もうこの人は、「普通」の範疇は外れてる。

「なのに勝負すんですから、巻き上げてんのと一緒ですよ」
「勝負をすると言ったのは、ルーフェイアです」

 毎度のことながら、この先輩は絶対自分が悪いとは言わない。

「話には聞いていたが、可愛いな。初めて見た」

 シルファ先輩のほうは俺らのやりとりより、このカードが気に入ったみたいだ。

 ――まぁ、女子が欲しがるカードだよな。

 やっぱ気になんのか、タシュア先輩がシルファ先輩の手もとを覗き込む。

「ほう、仔竜ですか。確かに珍しいですね」

 ほんと言うとこのカード、まるっきり枚数がないってわけじゃないんだとか。
 でも女子が秘蔵しちまうことが多くて出回らないから、結果的にレアになってる。

「それにしても、良く手に入ったな」
「真ん中の姉貴――って従姉妹ですけど、かなりのカードプレイヤーなんですよ」

 このゲームはアヴァンのほうが本家で、姉貴ときたらガキの頃から、オモチャ代わりにカードやってたっつーツワモノだ。
 で、この姉貴に頼んどくと、けっこうレアカードを取ってきてくれる。

「あと叔父さんもマニアで、しっかり集めてますし」

 もっともこっちはプレイはさほどしなくて、友達やら患者――一応開業医――が持ってきてくれるらしい。

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