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第8話 言葉ではなく

結末 Episode:01

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◇Imad

「それにしても、お前がクモ嫌いだとはな~」

 こいつ、何見たって平気な顔してっから、まさかこんなモンが苦手だとは思いもしなかった。

「もう、お願いだから言わないで……」
「あ、悪りぃ悪りぃ」

 よっぽどヤなんだろう、単語すら聞くのを嫌がる。

「けど、なんでンなに嫌いになったんだ?」

 俺の知るかぎりじゃ、女子ってのはたいてい、ゴキブリの方が嫌いだ。

「この子ね、むかし熱帯地の戦線に出た時に、毒蜘蛛にやられてヒドイ目に遭ったのよ」
「あ、それで……」

 こいつのお袋さんの言葉で納得した。
 ようするにトラウマってやつだろう。

 あの騒動からもう6日、俺らはベルデナードの、駅前広場とやらにいた。

 別にさっさと帰っちまってもよかったんだけど、「祭りでも見てけ」っつーシーモアたちの言葉に、ルーフェイアのお袋がみごとに便乗。

 さらにお袋さんに、ルーフェイアのやつが巻き込まれた。
 てか両親に「一緒に見よう」とか言われて、断れるヤツじゃねぇし。

 そんなワケでこの街に、俺らもいっしょに居座るハメになっちまった。

 もちろん祭りってのは抗争じゃない。
 どういうわけか国をあげて行われる、大統領の就任記念日祝いだ。

 でも「見てけ」ってだけあって、街中露店が出てたり大道芸やってたり模擬試合があったり、けっこう飽きなかった。

――メインの大統領演説は、めちゃくちゃつまんなかったけど。

 ついでに言うと今、ロデスティオの政界と軍部は大騒動ってやつだ。

 こないだのスラム侵攻で墓穴掘っちまったマルダーグ大佐とやらは、結局憲兵に自宅で麻薬組織のボスと一緒にいるとこを、とっ捕まっちまった。

 バカなことにスラムに軍出して安心しちまって、隠れんのも忘れて、高みの見物決めこんでたらしい。
 とっととズラかればいいのに、よっぽど自分の権力に自信があったってやつなんだろか?

 そのうえそっから芋づる式に、政界やら軍部やらの麻薬スキャンダルがバレて、もうどっち向いてもガタガタ。大統領演説の内容の大半が、こっち関係の話に切換えられたほどだ。

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