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第8話 言葉ではなく

戦闘 Episode:18

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「精霊はもう、ダメだよな?」
「――うん」

 こんな町中で何度も精霊を召喚したら、それこそ周囲の都市機能に影響を与えてしまう。

「ねぇイマド、さっき言ってた魔力の暴走って、させられないの?」
「できねぇ」

 望みを託した言葉を、イマドはあっさりと否定した。

「なんか知らねぇけど、魔力干渉防ぐ構造になってるみたいでさ。
 ――ってぇか、できりゃやってるって」

「あ、そうか……」

 けどこれ以上のダメージを与えるとなると、もう母さんでも呼んで同時攻撃するしかない。
 その時、ちょっと考えるようにしていたイマドが突然言った。

「おい、俺に防御魔法かけろ」
「えっ?」
「いいから!」

 戸惑いながらも呪文を唱える。
 あるいはイマド、何かいい方法を思いついたんだろうか?

「――エターナル・ブレス!」

 そうしてる間に、また鋼鉄のカニが立ち上がる。

「たかが鉄クズのくせに、てめぇ生意気なんだよっ!」

 ロングソードを手にイマドが突っ込んだ。
 巧みに爪をかいくぐり、あっというまに肉薄する。

「黙って壊れてろってんだ!」

 彼が人形のいちばん弱いところ、目に剣をつきたてた。
 剣が奥深くまでもぐりこみ、もういちどカニ動きが止まる。

「ルーフェイア、狙えっ!」

 瞬間イマドの考えてる事をあたしは悟った。
 迷わず呪文を唱える。

「遥かなる天より裁きの光、我が手に集いていかずちとなれ――」

 上級呪文を、全力でもう一度。狙いはイマドの剣。

「ケラウノス・レイジっ!!」

 刃を伝って、電撃が内部へと流れこむ。
 同時にイマドが、何をしたんだろう? あたしの雷撃に、カニの武器のエネルギーが乗ったように見えた。

「砕けろっっ!!」

 もとからの上級魔法の威力に、人形が持っていた魔力が加わる格好になって、通常を遥かに上回る雷撃が生み出される。

 太陽が落ちたみたいに、一瞬あたりが真っ白になって……。

 ばちばちという音を立てながら、この殺人兵器が爪を振り上げかけて――不意に止まった。

 周囲が静まり返る。
 駅から聞こえてくるアナウンスが、奇妙なくらい広場に響いた。
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