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第8話 言葉ではなく

戦闘 Episode:17

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「機能以上っておい、上級魔法以上のダメージ与えろってか? 冗談キツいな――っと」

 イマドがぼやきながら、カニの爪を飛び退って躱した。
 標的をしとめ損ねた目が、周囲を探る。

 瞬間、嫌なものを感じた。

「イマド、伏せてっ!」

 警告しながらあたしは呪文を唱えた。
 鋼鉄のカニに装備されている、砲門に光がともる。

「――ルス・バレーっ!」

 あたしたちに向けて、光の槍が降り注ぐ。
 でもぎりぎりのところで、呪文が間に合った。
 
 伏せて直撃を避けられたのと魔法の盾とのおかげで、焼け付くような熱さは感じたけど、それ以上はない。

「あんなもんまで装備してやがんのか。これじゃうかつに近寄れねぇな」

 イマドの言葉にあたしも考え込んだ。
 あれだけの雷撃を受けてまだ平気となると、もう手段が限られてくる。
 しかも砲門があって近寄れないから、さらに難易度が上がる。

「精霊――使うわ」
「まぁ、しょうがねぇな」

 精霊は、町中では使わないのが基本だ。
 なにしろ効果範囲が大きすぎるし、それ以上に使った地点のエネルギー傾斜を、一時的とはいえ狂わせてしまう。

 でもこの状況じゃそんなことは言ってられなかった。
 それに幸いここは広いから、周囲もさほど巻き込まないで済むはずだ。

「魔法防御、働かせられる? 母さんの精霊なら、それできたと思う」
「ああ」

 答えを聞いて安心する。これなら万が一にも、イマドがダメージを受けることはない。
 内に宿る力を解放しようと、呪を唱えはじめる。

「鳴り響く時の内に棲む者よ、その稲妻持ちて我が敵を打ち砕け――」

 その間にイマドが魔法を放って、人形の足を止めてくれた。

「来いっ、アエグルンっ!!」

 靄のようなものがわだかまって、異形としか言いようのないものが実体化した。

 角から、翼から、身体から、鮮やかな電撃がほとばしり、それが呼び水となって天空からもいかずちが降り注ぐ。

 閃光。
 轟音。
 そして空気の焦げる匂い。

 手応えはあった。
 これで倒れてくれれば……。

 でもその思いも虚しく、人形が再び自己修復を始める。
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