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第8話 言葉ではなく

戦闘 Episode:14

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「いったいなんだ、あれは!」
「その、子供と思われますが……」
「なにバカなことを言っている、あれが普通の子供のわけがなかろう!」

 ここの指揮を執っているらしい上級仕官は、パニック状態だ。

「ですが、あれはどう見ても……」
「見かけは子供でも、あれは化け物だ!」

 それを耳にしたイマドが憤然とする。

「てめぇらが弱すぎるだけだろ」

 もっともそんな呟き、向こうは聞いてない。

「例のものをこっちに回せ! 叩き潰してやる!」
「ですが、あれはまだ……」
「かまわん! いざという時にはテストも兼ねて使ってみろと、マルダーグ大佐の仰せだ」 

 仕官の言葉に、あたしとイマドは顔を見合わせた。

「今、『マルダーグ大佐』って言った……よね?」

「ああ。
 ってことは、あいつを捕まえれば芋づるで、その大佐もとっ捕まえられるんじゃねぇか?」

 そんな話をしながら、二人でもう一段前へ出る。
 けど。

 唐突に兵士が左右に分かれた。

「なんだあれ、デカいな」

 イマドの言う通り、かなり大きな人形が、こっちへ向かってくる。

「型、わかるか?」
「ううん、初めて見るわ……」

 黒が基調で、カニのような姿をしている。外骨格はどうやら、鋼鉄らしい。

「思うんだけどよ、人形ってワリに人間型じゃねぇの、多くねぇか?」
「最近の、みんなそうかも……」

 場違いな言葉に、一瞬戦闘を忘れかけた。
 けどたしかに戦闘力が高いものほど、人間からはかけ離れた形になってる。

「しゃぁねぇな。とりあえず合成獣じゃなくて機械みてぇだから、その路線か?」
「たぶん、そうだと――??」

 鋼鉄のカニが、不意にその爪のついた腕を振り回した。
 近くにいた兵士がまともに食らって、吹き飛ばされる。

 次いでカニは、手近な建物や車両に突進し始めた。

「……暴走、してねぇか?」
「してる……と思う……」

 呆れてものが言えないというのは、まさにこのことだろう。

「なぜだ、なぜちゃんと動かん!」
「その、なにせプロトタイプですので……」

 指揮官や上級士官もうろたえている。
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