399 / 743
第8話 言葉ではなく
戦闘 Episode:10
しおりを挟む
「――お前のお袋だったのか」
「たぶん……そうだと思う」
きっと読み取ったんだろう、何も言わないのに声をかけてきたイマドに、あたしはため息をつきながら答えた。
ほんとに母さんときたら、やることが突拍子もない。
「だから、だから私は、こんな場所への出動はイヤだったんだ!」
向こうのほうでは何か布――じゃなくて、赤ちゃんの使用済みオムツらしい――の直撃を受けた上級士官が、愚痴をこぼしていた。
この仕官は気が進まなかったものの、命令に逆らえなくて嫌々ここまで兵を率いて来たらしい。
「そんなにイヤなら、来るんじゃないってのさ」
「それは……無理よ」
毒づいているシーモアに、あたしは答えた。
「命令に従わなかったら、どうなるか分からないもの」
良くても営倉入りだろうし、時と場合と所属している国が悪かったら銃殺刑も有り得る。
「向こうさんもお気の毒ってやつか。タイヘンだな~」
イマドが少しだけ同情したような声を出した。
あいかわらず向こうは大混乱だ。
「えぇい、何をしているか! 早く人形を出せっ!」
業を煮やしたのか、さっきとは別の上級士官がそう叫んだ。
「ともかく構わん、片っ端から叩き壊せ!」
――なんてめちゃくちゃな。
およそ軍人とは思えない命令に呆れる。
でも治安維持部隊の兵士たちはそれを真に受けたらしくて、次々と人形が前へ出てきた。
こうなると……どう考えても一般の人やシーモアたちには荷が重くなる。
そう思ってるうちに一機が連射砲を撃って、慌ててスラムの人たちが部屋の中へと引っ込んだ。
――あの人たち、なにもしてないのに。
ひどく腹がたってくる。
「あのね、ここ以外の状況って分かる?」
向こうの部隊を見据えながら、あたしはイマドに聞いた。
「ちょっと待ってくれな。
――向うはぜんぜん平気だってさ。あと、ほかの細い道なんかはクリアゾンの人が出て、防衛線張ってくれたらしいぜ」
答えるイマド。力の扱い方に、だいぶ慣れてきたみたいだ。
「とりあえず、お前はそこをしっかり守ってろって。で、なんか突破されたら写影増やすとか、お前のお袋言ってるぞ?」
「………」
最後の一言は余計だ。
「たぶん……そうだと思う」
きっと読み取ったんだろう、何も言わないのに声をかけてきたイマドに、あたしはため息をつきながら答えた。
ほんとに母さんときたら、やることが突拍子もない。
「だから、だから私は、こんな場所への出動はイヤだったんだ!」
向こうのほうでは何か布――じゃなくて、赤ちゃんの使用済みオムツらしい――の直撃を受けた上級士官が、愚痴をこぼしていた。
この仕官は気が進まなかったものの、命令に逆らえなくて嫌々ここまで兵を率いて来たらしい。
「そんなにイヤなら、来るんじゃないってのさ」
「それは……無理よ」
毒づいているシーモアに、あたしは答えた。
「命令に従わなかったら、どうなるか分からないもの」
良くても営倉入りだろうし、時と場合と所属している国が悪かったら銃殺刑も有り得る。
「向こうさんもお気の毒ってやつか。タイヘンだな~」
イマドが少しだけ同情したような声を出した。
あいかわらず向こうは大混乱だ。
「えぇい、何をしているか! 早く人形を出せっ!」
業を煮やしたのか、さっきとは別の上級士官がそう叫んだ。
「ともかく構わん、片っ端から叩き壊せ!」
――なんてめちゃくちゃな。
およそ軍人とは思えない命令に呆れる。
でも治安維持部隊の兵士たちはそれを真に受けたらしくて、次々と人形が前へ出てきた。
こうなると……どう考えても一般の人やシーモアたちには荷が重くなる。
そう思ってるうちに一機が連射砲を撃って、慌ててスラムの人たちが部屋の中へと引っ込んだ。
――あの人たち、なにもしてないのに。
ひどく腹がたってくる。
「あのね、ここ以外の状況って分かる?」
向こうの部隊を見据えながら、あたしはイマドに聞いた。
「ちょっと待ってくれな。
――向うはぜんぜん平気だってさ。あと、ほかの細い道なんかはクリアゾンの人が出て、防衛線張ってくれたらしいぜ」
答えるイマド。力の扱い方に、だいぶ慣れてきたみたいだ。
「とりあえず、お前はそこをしっかり守ってろって。で、なんか突破されたら写影増やすとか、お前のお袋言ってるぞ?」
「………」
最後の一言は余計だ。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
レディース異世界満喫禄
日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。
その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。
その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!
yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。
だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。
創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。
そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。
私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください。
アーエル
ファンタジー
旧題:私は『聖女ではない』ですか。そうですか。帰ることも出来ませんか。じゃあ『勝手にする』ので放っといて下さい。
【 聖女?そんなもん知るか。報復?復讐?しますよ。当たり前でしょう?当然の権利です! 】
地震を知らせるアラームがなると同時に知らない世界の床に座り込んでいた。
同じ状況の少女と共に。
そして現れた『オレ様』な青年が、この国の第二王子!?
怯える少女と睨みつける私。
オレ様王子は少女を『聖女』として選び、私の存在を拒否して城から追い出した。
だったら『勝手にする』から放っておいて!
同時公開
☆カクヨム さん
✻アルファポリスさんにて書籍化されました🎉
タイトルは【 私は聖女ではないですか。じゃあ勝手にするので放っといてください 】です。
そして番外編もはじめました。
相変わらず不定期です。
皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます🙇💕
これからもよろしくお願いします。
『種族:樹人』を選んでみたら 異世界に放り出されたけれど何とかやってます
しろ卯
ファンタジー
VRMMO『無題』をプレイしていた雪乃の前に表示された謎の選択肢、『この世界から出る』か『魔王になる』。
魔王を拒否して『この世界から出る』を選択した雪乃は、魔物である樹人の姿で異世界へと放り出されてしまう。
人間に見つかれば討伐されてしまう状況でありながら、薬草コンプリートを目指して旅に出る雪乃。
自由気ままなマンドラゴラ達や規格外なおっさん魔法使いに助けられ、振り回されながら、小さな樹人は魔王化を回避して薬草を集めることができるのか?!
天然樹人少女と暴走魔法使いが巻き起こす、ほのぼの珍道中の物語。
※なろうさんにも掲載しています。
みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!
沢野 りお
ファンタジー
【書籍化します!】2022年12月下旬にレジーナブックス様から刊行されることになりました!
定番の転生しました、前世アラサー女子です。
前世の記憶が戻ったのは、7歳のとき。
・・・なんか、病的に痩せていて体力ナシでみすぼらしいんだけど・・・、え?王女なの?これで?
どうやら亡くなった母の身分が低かったため、血の繋がった家族からは存在を無視された、みそっかすの王女が私。
しかも、使用人から虐げられていじめられている?お世話も満足にされずに、衰弱死寸前?
ええーっ!
まだ7歳の体では自立するのも無理だし、ぐぬぬぬ。
しっかーし、奴隷の亜人と手を組んで、こんなクソ王宮や国なんか出て行ってやる!
家出ならぬ、王宮出を企てる間に、なにやら王位継承を巡ってキナ臭い感じが・・・。
えっ?私には関係ないんだから巻き込まないでよ!ちょっと、王族暗殺?継承争い勃発?亜人奴隷解放運動?
そんなの知らなーい!
みそっかすちびっ子転生王女の私が、城出・出国して、安全な地でチート能力を駆使して、ワハハハハな生活を手に入れる、そんな立身出世のお話でぇーす!
え?違う?
とりあえず、家族になった亜人たちと、あっちのトラブル、こっちの騒動に巻き込まれながら、旅をしていきます。
R15は保険です。
更新は不定期です。
「みそっかすちびっ子王女の転生冒険ものがたり」を改訂、再up。
2021/8/21 改めて投稿し直しました。
【毎日更新】元魔王様の2度目の人生
ゆーとちん
ファンタジー
人族によって滅亡を辿る運命だった魔族を神々からの指名として救った魔王ジークルード・フィーデン。
しかし神々に与えられた恩恵が強力過ぎて神に近しい存在にまでなってしまった。
膨大に膨れ上がる魔力は自分が救った魔族まで傷付けてしまう恐れがあった。
なので魔王は魔力が漏れない様に自身が張った結界の中で一人過ごす事になったのだが、暇潰しに色々やっても尽きる気配の無い寿命を前にすると焼け石に水であった。
暇に耐えられなくなった魔王はその魔王生を終わらせるべく自分を殺そうと召喚魔法によって神を下界に召喚する。
神に自分を殺してくれと魔王は頼んだが条件を出された。
それは神域に至った魔王に神になるか人族として転生するかを選べと言うものだった。
神域に至る程の魂を完全に浄化するのは難しいので、そのまま神になるか人族として大きく力を減らした状態で転生するかしか選択肢が無いらしい。
魔王はもう退屈はうんざりだと言う事で神になって下界の管理をするだけになるのは嫌なので人族を選択した。
そして転生した魔王が今度は人族として2度目の人生を送っていく。
魔王時代に知り合った者達や転生してから出会った者達と共に、元魔王様がセカンドライフを送っていくストーリーです!
元魔王が人族として自由気ままに過ごしていく感じで書いていければと思ってます!
カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しております!
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる