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第8話 言葉ではなく

戦闘 Episode:10

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「――お前のお袋だったのか」
「たぶん……そうだと思う」

 きっと読み取ったんだろう、何も言わないのに声をかけてきたイマドに、あたしはため息をつきながら答えた。
 ほんとに母さんときたら、やることが突拍子もない。

「だから、だから私は、こんな場所への出動はイヤだったんだ!」

 向こうのほうでは何か布――じゃなくて、赤ちゃんの使用済みオムツらしい――の直撃を受けた上級士官が、愚痴をこぼしていた。
 この仕官は気が進まなかったものの、命令に逆らえなくて嫌々ここまで兵を率いて来たらしい。

「そんなにイヤなら、来るんじゃないってのさ」
「それは……無理よ」

 毒づいているシーモアに、あたしは答えた。

「命令に従わなかったら、どうなるか分からないもの」

 良くても営倉入りだろうし、時と場合と所属している国が悪かったら銃殺刑も有り得る。

「向こうさんもお気の毒ってやつか。タイヘンだな~」

 イマドが少しだけ同情したような声を出した。
 あいかわらず向こうは大混乱だ。

「えぇい、何をしているか! 早く人形を出せっ!」

 業を煮やしたのか、さっきとは別の上級士官がそう叫んだ。

「ともかく構わん、片っ端から叩き壊せ!」

 ――なんてめちゃくちゃな。

 およそ軍人とは思えない命令に呆れる。
 でも治安維持部隊の兵士たちはそれを真に受けたらしくて、次々と人形が前へ出てきた。

 こうなると……どう考えても一般の人やシーモアたちには荷が重くなる。

 そう思ってるうちに一機が連射砲を撃って、慌ててスラムの人たちが部屋の中へと引っ込んだ。

 ――あの人たち、なにもしてないのに。

 ひどく腹がたってくる。

「あのね、ここ以外の状況って分かる?」

 向こうの部隊を見据えながら、あたしはイマドに聞いた。

「ちょっと待ってくれな。
 ――向うはぜんぜん平気だってさ。あと、ほかの細い道なんかはクリアゾンの人が出て、防衛線張ってくれたらしいぜ」

 答えるイマド。力の扱い方に、だいぶ慣れてきたみたいだ。

「とりあえず、お前はそこをしっかり守ってろって。で、なんか突破されたら写影増やすとか、お前のお袋言ってるぞ?」

「………」

 最後の一言は余計だ。
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