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第8話 言葉ではなく
証拠 Episode:16
しおりを挟む「で、それが今日の予定だったでしょ?
だからそれにかこつけて出動して、いろいろ根こそぎ潰そうってことらしいのよ」
「――とんでもない連中ね」
母さんが毒づく。
けどこれで、最後のパズルの欠片がはまった。
つまりちょっとのことでは動かないクリアゾンの代わりに、ダグさんとガルシィさんのチームを仲違いさせて抗争を起こさせて、それを口実にスラムの目障りな人たちを片付けるつもりだったのだ。
「ともかく急がないと、大変なことになりかねないわ」
「それはそうね」
あたしも同感だった。
『治安維持』と言えば聞こえはいいけど、この場合は下手をすると強盗集団よりタチが悪い。
なにしろロデスティオ軍の規律の乱れは有名だ。進軍した先で一般市民に暴力を振るうことも日常茶飯事で、母さんは見つけるたびに叩きのめしてた。
それがシティの人たちさえも嫌う、スラムへ進軍?したら……。
「まったくいつもはほったらかしなのに、今回に限って連中も何考えたのかしらね?
それにコーニッシュ大佐とやら、とんだ食わせ者だったわ。穏健派でならしてると思ったらこの騒ぎだもの」
「どういうこと?」
母さんが尋ねる。
「この命令だしたの、コーニッシュ大佐だそうよ」
「リオネルが……?」
昨日と同じように顎に手を当てて、母さんが考えこんだ。
きっと信じられないんだろう。
「そりゃ、あなたは大佐を直接知ってるみたいだから信じたくないんだろうけど。
でも軍に行ってる子が出動の情報と一緒に流してくれたから、間違いないわ」
「………」
しばらくの沈黙の後、母さんが口にしたのはぜんぜん別の言葉だった。
「部隊が来るのに、どのくらいかかりそう?」
「小一時間ってとこかしら?」
どこでどう情報を手に入れたのか、迷うことなくレニーサさんが答える。
「――そう。それじゃ黒幕のとこへ行ってる暇はなさそうね。
せっかくの獲物を逃がすのは癪だけど、しょうがない、防衛戦に回りましょ。
さ、行くわよ」
せっかく遊びに行こうとしたら寸前で邪魔が入った、そんな母さんが言った。
「ちょ、ちょっと、あなたたちだけで?!
もう少しすればクリアゾンの面々やらちびちゃんたちのグループが揃うから、それまで待ちなさいよ」
「へーきへーき、このメンツだったらビルの一つや二つ、軽く壊せるから」
しかもどういうわけか、イマドの襟首をつかむ。
「メシ……」
「しのごの言わないの!」
引きずられてく彼を追いかけて、あたしも部屋を出た。
隣の部屋へ抜けて、それから店のほうへ出る。
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