358 / 743
第8話 言葉ではなく
追跡 Episode:07
しおりを挟む
――割合簡単だったじゃん。
もうちょっとややこしいことになるかと思ったけど、予想が当たったせいで簡単に片付いちまった。
敷地を抜けて、また裏路地へ入る。
この辺は同じスラムでもショッピングモールに近いせいで、雰囲気は歓楽街だ。
問題のT字路までは、もう目と鼻の先だった。
待機してるヤツや、ナティがいるのまで見える。
けど、その時。
後ろに気配を感じて、とっさに前へ身体を投げ出す。
さっきまであたしがいた場所を、何かが薙いだ。
もっともあたしだって、そうそう負けちゃいられない。なにせこっちは学院生だ。
勢いを利用しながら手を付いて前転して、その反動で上手く起き上がる。ついでにその時には、愛用?の短銃が手にあるって寸法だ。
そしてそのまま後ろは見ずに、カンで数発撃った。
押し殺したみたいな悲鳴が上がる。
――殺ったか?
特製の弾仕込んどいたのがよかったらしい。
警戒したまま、あたしは初めて後ろを向いた。
ここらじゃあんまり見かけない服装の男が、顔から胸にかけて弾を受けて倒れてやがる。
バカとしか言いようがないけど、あたしが子供だと思って油断したんだろう。
でもとどめを刺そうとしたその時、また気配を感じた。
こんどはとっさに横に避ける。
――って、うそだろっ!
飛び退いた先にもうひとり剣――というか、これは青龍刀って類か?――を構えてるなんざ、よほど運が悪いとしか言いようがない。
さすがにケガは覚悟する。
青龍刀が振り下ろされた。
――?
刃が来ない。
代わりに激しく金属がぶつかり合う音。
「いい大人が、子供相手になにやってんのかしらねぇ?」
この状況じゃ呆れるしかないほど、のんびりした調子の声が降ってきた。
目の前を金髪が踊る。
「ルーフェイアの……?」
「ケガないわね?」
視線は連中から外さずに、この人が訊いてくる。
「あ、はい」
「よかったわ、間に合ったわけね」
割って入ってくれたのは、ルーフェイアのお袋さんだった。
そのうえウソみたいな話だけど、襲ってきたやつが持ってた青龍刀の刃が、すっぱり切り飛ばされてる。
この人が持ってるのは、青龍刀なんかに比べたらオモチャみたいにしか見えない太刀だ。
――それで、あの分厚い刃を両断してみせたってのか?
よほどの実力がなきゃ、こんなマネできっこない。
もうちょっとややこしいことになるかと思ったけど、予想が当たったせいで簡単に片付いちまった。
敷地を抜けて、また裏路地へ入る。
この辺は同じスラムでもショッピングモールに近いせいで、雰囲気は歓楽街だ。
問題のT字路までは、もう目と鼻の先だった。
待機してるヤツや、ナティがいるのまで見える。
けど、その時。
後ろに気配を感じて、とっさに前へ身体を投げ出す。
さっきまであたしがいた場所を、何かが薙いだ。
もっともあたしだって、そうそう負けちゃいられない。なにせこっちは学院生だ。
勢いを利用しながら手を付いて前転して、その反動で上手く起き上がる。ついでにその時には、愛用?の短銃が手にあるって寸法だ。
そしてそのまま後ろは見ずに、カンで数発撃った。
押し殺したみたいな悲鳴が上がる。
――殺ったか?
特製の弾仕込んどいたのがよかったらしい。
警戒したまま、あたしは初めて後ろを向いた。
ここらじゃあんまり見かけない服装の男が、顔から胸にかけて弾を受けて倒れてやがる。
バカとしか言いようがないけど、あたしが子供だと思って油断したんだろう。
でもとどめを刺そうとしたその時、また気配を感じた。
こんどはとっさに横に避ける。
――って、うそだろっ!
飛び退いた先にもうひとり剣――というか、これは青龍刀って類か?――を構えてるなんざ、よほど運が悪いとしか言いようがない。
さすがにケガは覚悟する。
青龍刀が振り下ろされた。
――?
刃が来ない。
代わりに激しく金属がぶつかり合う音。
「いい大人が、子供相手になにやってんのかしらねぇ?」
この状況じゃ呆れるしかないほど、のんびりした調子の声が降ってきた。
目の前を金髪が踊る。
「ルーフェイアの……?」
「ケガないわね?」
視線は連中から外さずに、この人が訊いてくる。
「あ、はい」
「よかったわ、間に合ったわけね」
割って入ってくれたのは、ルーフェイアのお袋さんだった。
そのうえウソみたいな話だけど、襲ってきたやつが持ってた青龍刀の刃が、すっぱり切り飛ばされてる。
この人が持ってるのは、青龍刀なんかに比べたらオモチャみたいにしか見えない太刀だ。
――それで、あの分厚い刃を両断してみせたってのか?
よほどの実力がなきゃ、こんなマネできっこない。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
聖女なので公爵子息と結婚しました。でも彼には好きな人がいるそうです。
MIRICO
恋愛
癒しの力を持つ聖女、エヴリーヌ。彼女は聖女の嫁ぎ制度により、公爵子息であるカリス・ヴォルテールに嫁ぐことになった。しかしカリスは、ブラシェーロ公爵子息に嫁ぐ聖女、アティを愛していたのだ。
カリスはエヴリーヌに二年後の離婚を願う。王の命令で結婚することになったが、愛する人がいるためエヴリーヌを幸せにできないからだ。
勝手に決められた結婚なのに、二年で離婚!?
アティを愛していても、他の公爵子息の妻となったアティと結婚するわけにもいかない。離婚した後は独身のまま、後継者も親戚の子に渡すことを辞さない。そんなカリスの切実な純情の前に、エヴリーヌは二年後の離婚を承諾した。
なんてやつ。そうは思ったけれど、カリスは心優しく、二年後の離婚が決まってもエヴリーヌを蔑ろにしない、誠実な男だった。
やめて、優しくしないで。私が好きになっちゃうから!!
ブックマーク・いいね・ご感想等、ありがとうございます。誤字もお知らせくださりありがとうございます。修正します。ご感想お返事ネタバレになりそうなので控えさせていただきます。
万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか?
Gai
ファンタジー
鉄柱が頭にぶつかって死んでしまった少年は神様からもう異世界へ転生させて貰う。
貴族の四男として生まれ変わった少年、ライルは属性魔法の適性が全くなかった。
貴族として生まれた子にとっては珍しいケースであり、ラガスは周りから憐みの目で見られる事が多かった。
ただ、ライルには属性魔法なんて比べものにならない魔法を持っていた。
「はぁーー・・・・・・属性魔法を持っている、それってそんなに凄い事なのか?」
基本気だるげなライルは基本目立ちたくはないが、売られた値段は良い値で買う男。
さてさて、プライドをへし折られる犠牲者はどれだけ出るのか・・・・・・
タイトルに書いてあるパートナーは序盤にはあまり出てきません。
元勇者で神に近い存在になった男、勇者パーティに混じって魔王討伐参加してたら追い出されました。
明石 清志郎
ファンタジー
昔とある世界で勇者として召喚され、神に近い存在になった男ジン。
新人研修の一環として同胞の先輩から、適当に世界を一つ選んでどんな方法でもいいから救えと言われ、自分の昔行った異世界とは別の世界を選び、勇者四人の選定も行った。
自分もそこで勇者として潜入し、能力を隠しつつ、勇者達にアドバイスなんかを行い後方支援を行い、勇者を育てながら魔王討伐の旅にでていた。
だがある日の事だ。
「お前うるさいし、全然使えないからクビで」
「前に出ないくせに、いちいちうぜぇ」
等と言われ、ショックと同時にムカつきを覚えた。
俺は何をミスった……上手くいってる思ったのは勘違いだったのか……
そんな想いを抱き決別を決意。
だったらこいつらは捨ててるわ。
旅に出て仲間を見つけることを決意。
魔王討伐?一瞬でできるわ。
欲しかった仲間との真の絆を掴む為にまだよく知らない異世界を旅することに。
勇者?そんな奴知らんな。
美女を仲間にして異世界を旅する話です。気が向いたら魔王も倒すし、勇者も報復します。
〈本編完結〉ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません
詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編として出来るだけ端折って早々に完結予定でしたが、予想外に多くの方に読んでいただき、書いてるうちにエピソードも増えてしまった為長編に変更致しましたm(_ _)m
ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいです💦
*主人公視点完結致しました。
*他者視点準備中です。
*思いがけず沢山の感想をいただき、返信が滞っております。随時させていただく予定ですが、返信のしようがないコメント/ご指摘等にはお礼のみとさせていただきます。
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。
周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。
見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。
脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。
「マリーローズ?」
そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。
目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。
だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。
日本で私は社畜だった。
暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。
あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。
「ふざけんな___!!!」
と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。
人の才能が見えるようになりました。~いい才能は幸運な俺が育てる~
犬型大
ファンタジー
突如として変わった世界。
塔やゲートが現れて強いものが偉くてお金も稼げる世の中になった。
弱いことは才能がないことであるとみなされて、弱いことは役立たずであるとののしられる。
けれども違ったのだ。
この世の中、強い奴ほど才能がなかった。
これからの時代は本当に才能があるやつが強くなる。
見抜いて、育てる。
育てて、恩を売って、いい暮らしをする。
誰もが知らない才能を見抜け。
そしてこの世界を生き残れ。
なろう、カクヨムその他サイトでも掲載。
更新不定期
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
『種族:樹人』を選んでみたら 異世界に放り出されたけれど何とかやってます
しろ卯
ファンタジー
VRMMO『無題』をプレイしていた雪乃の前に表示された謎の選択肢、『この世界から出る』か『魔王になる』。
魔王を拒否して『この世界から出る』を選択した雪乃は、魔物である樹人の姿で異世界へと放り出されてしまう。
人間に見つかれば討伐されてしまう状況でありながら、薬草コンプリートを目指して旅に出る雪乃。
自由気ままなマンドラゴラ達や規格外なおっさん魔法使いに助けられ、振り回されながら、小さな樹人は魔王化を回避して薬草を集めることができるのか?!
天然樹人少女と暴走魔法使いが巻き起こす、ほのぼの珍道中の物語。
※なろうさんにも掲載しています。
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる