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第8話 言葉ではなく

追跡 Episode:03

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「何かあったら、すぐに誰か呼ぶんだぞ。俺でもシーモアたちでもいい。
 あと手、出されそうになったら、容赦なくやれよ。いいな」

「……わかった」

 こいつの場合こうやって言い置いておかないと、命に関わらない限りは絶対躊躇って手を出せない。

「……気をつけてね?」
「平気だって」

 前のやつが離れてから少し間を置いて、俺はそいつに近づいた。

「なんだ? 見かけない顔だな。何の用だってんだよ」
「雪が降りそうだろ」

 この言葉で、こいつの顔色が変わる。

「誰から聞いた?」

「誰でもいいだろ。
 ――幾らだ?」

 いきなり本題に入る。

 クスリ売ってるヤツはせいぜい俺と同じか、もう少し年下だ。
 ただ身長は俺よりかなり低いし、ひょろひょろしてて風に飛びそうだった。

 これなら荒っぽくいったほうが、たぶん早いだろう。

「だから、誰に訊いた」

「うるせぇな。ここなら安く手に入るって訊いて、わざわざ役人街から来たんだ。
 売るのか、売らねぇのか?」

 睨みつけて脅す。

「金だったら、ちゃんとあるんだぜ」

 言いながら用意してあった――というか、ルーフェイアのおふくろさんが無造作に渡してくれた――高額紙幣の束を、これ見よがしにちらつかせる。スラムじゃまずお目にかかれないような額だ。

 もちろん俺みたいな子供が持ってるのも不自然といえば不自然だけど、「役人街」の一言が効いたのか、こいつは不審がらなかった。

「でも、知らねぇやつに売ったら、ボスに……」

「こんないい売り場、俺だって喋らねぇよ。
 それにもし売ってくれるなら、お前にも少しやるぜ。手数料ってことで」

 こいつの目が輝いた。

「そ、そういうことなら……」

 恐る恐るって調子で、小さな包みがひとつ、差し出される。

 ――ふぅん、二、三回分か?

「これで……300ルルシなんだ」

 確かに安い。シーモアたちから訊いてた相場の、半分以下ってヤツだ。
 ただヤクが目的じゃないから、ここですんなり買うわけにいかなかった。

「――おい、待てよ。これだけ出してんのに、これっぽっちか?」

 違う方向で突っかかる。

「え? いや、あとこれだけなら」

 さらに包みが、20ほど出された。

「今日は、これでぜんぶなんだ」
「じゃぁ、どっかからもらって来いよ。10や20どころか、50だってまとめて買うぜ」
「そう言われたって……」
「ざけんなっ!」

 可哀想っつや可哀想だけど、こいつの胸倉をつかんでナイフをつきつける。
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