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第8話 言葉ではなく

尋ね人 Episode:10

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「なんかあったら起こしてやるよ」
「うん……」

 言うが早いが、たちまち寝入っちまった。あとはどれだけシーモアたちと根競べできるか、だ。

 でも幸いこいつが――ルーフェイアはかなり体温が高い――くっついてるお陰で、寒さは感じない。
 こいつの様子を見ながら、俺は待つことにした。


 それから多分、一時間くらい過ぎた頃だ。

「イマドっ! あんたがついててなにやってんのさっ!」
「お、やっと開ける気になったか」

 とうとう根負けしたシーモアたちが、ドアを開けた。

「『開ける気になったか』じゃないよっ!
 ほらっ、ガルシィに許可もらったから、早く入りな!!」

「りょーかいっと」

 ただそうは言っても、すぐには動けねぇんだよな。

「ルーフェイア、起きろって」

 まず寄りかかってるこいつを起こさないことにゃ、俺も身動きできない。

 ――ってあれ?

 嘘みてぇだけどルーフェイアのヤツ、熟睡してやがる。
 いつも気配だけで目を覚ますこいつがこれは、かなり珍しい。

「まさか、ルーフェイアってば寝ちゃってるの?」
「ああ。気持ち良さそうに熟睡してるな」

 もっとも危険がせまりゃ、瞬時に目を覚まして太刀を構えるんだろうけど。
 けどほかの連中は、違う意味に取ったらしい。

「おいっ、誰か来い!」

 少し奥にいたリーダーの人が、慌てた調子で仲間を呼んでる。

「――? 何慌ててんです?」
「なにのんきなこと言ってるんだ! ほらっ、お嬢ちゃん!」
「あ、だめです、ンなことしたら……」

 俺が言い終えるより早く、びくりと身をすくませてルーフェイアが目を覚ました。
 その手が太刀を抜きかける。

「落ちつけ、ルーフェイア。シーモアたちだ!」
「え……? あ」

 一瞬のタイムラグを置いて、ルーフェイアのやつが状況を理解した顔になった。

「――おはよう、シーモア」

 思わずそこにいた全員が石化する。

「『おはよう』じゃねぇだろ……」
「え?」

 こいつ珍しく熟睡しきってたせいか、どうも寝ぼけてたらしい。

「えっと……?」
「ルーフェイア、なんでもないのねっ?!」
「え? うん……」

 血相変えてるシーモアたちと、ぼーっとしてるルーフェイアの対比がめちゃくちゃ笑えた。
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