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第8話 言葉ではなく
尋ね人 Episode:06
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◇Seamore
「♪♪♪~」
向こうのほうでハミングしながら、ナティエスのやつが何やら作ってた。
あいつが機嫌がいい理由は、単純だ。
街へ繰り出してみたら案の定、みんな気が緩んでて、まさに掏り放題ってやつだった。
「さぁみんな、出来たよ~♪」
高価な魚介を山ほど放りこんだスープを、ナティが持ってくる。
「へぇ、美味しそうじゃないのさ」
「でもごめんね、あとはパンとサラダだけ。あ、けどミルクとチーズはあるから」
「いいっていいって。明日祭りがあるのに、そんなに大食らいするわけにゃいかねぇからな」
「ホント。だいいちこんな高価いモンけっこう久しぶりだし、これで十分だよ」
そんなことを言いながら、チームの連中がぞろぞろ集まってきた。
「おい、もう食っていいんだろ?」
言うが早いか手が出る。
「あ、ちょっと! 分けて上げるから、待ちなさいってば!」
ナティのやつが容赦なく声をあげた。
「ったくもう、意地汚いんだから。だいいちこれ、あたしが用意したのよ」
「分かってる分かってる」
昔から、なんやかやと賄いやってたナティは、こーゆーことなら発言力がある。
年上だろうがなんだろうが、お構いなしってやつだ。
「にしても、よくこんなに買えたな」
「だから言ったでしょ、掏り放題だったって。
もうみんなバカよね。明後日の記念日に浮かれちゃって、懐なんかまるっきりお留守だもん」
もっともそれを差し引いたって、こいつの腕はたいしたもんだろうけど。
ついでに言うとナティのやつ、財布をまるごと取って来ない。
札束のなかからちょこっと抜いて、場合によっちゃ「落ちました」って返すんだから、たいした度胸だ。
――当人曰く、「そのほうが怪しまれない」ってんだけどね。
ただもしかすると、単純に掏るのが楽しいってやつかもしれない。
ともかくそれを、場所変えながら繰り返してこれだけの額集めたんだから、もうプロって言っても通用するだろう。
「はいどうぞ。熱いから気をつけてね?」
スープをよそり終えたナティの言葉を合図に、今度こそ一斉に手が伸びる。
「どぉ? 美味しい?」
「ああ。明日があるから、おなかいっぱい食べられないのが、残念だね」
そう答えると、ナティがあははと笑った。
「♪♪♪~」
向こうのほうでハミングしながら、ナティエスのやつが何やら作ってた。
あいつが機嫌がいい理由は、単純だ。
街へ繰り出してみたら案の定、みんな気が緩んでて、まさに掏り放題ってやつだった。
「さぁみんな、出来たよ~♪」
高価な魚介を山ほど放りこんだスープを、ナティが持ってくる。
「へぇ、美味しそうじゃないのさ」
「でもごめんね、あとはパンとサラダだけ。あ、けどミルクとチーズはあるから」
「いいっていいって。明日祭りがあるのに、そんなに大食らいするわけにゃいかねぇからな」
「ホント。だいいちこんな高価いモンけっこう久しぶりだし、これで十分だよ」
そんなことを言いながら、チームの連中がぞろぞろ集まってきた。
「おい、もう食っていいんだろ?」
言うが早いか手が出る。
「あ、ちょっと! 分けて上げるから、待ちなさいってば!」
ナティのやつが容赦なく声をあげた。
「ったくもう、意地汚いんだから。だいいちこれ、あたしが用意したのよ」
「分かってる分かってる」
昔から、なんやかやと賄いやってたナティは、こーゆーことなら発言力がある。
年上だろうがなんだろうが、お構いなしってやつだ。
「にしても、よくこんなに買えたな」
「だから言ったでしょ、掏り放題だったって。
もうみんなバカよね。明後日の記念日に浮かれちゃって、懐なんかまるっきりお留守だもん」
もっともそれを差し引いたって、こいつの腕はたいしたもんだろうけど。
ついでに言うとナティのやつ、財布をまるごと取って来ない。
札束のなかからちょこっと抜いて、場合によっちゃ「落ちました」って返すんだから、たいした度胸だ。
――当人曰く、「そのほうが怪しまれない」ってんだけどね。
ただもしかすると、単純に掏るのが楽しいってやつかもしれない。
ともかくそれを、場所変えながら繰り返してこれだけの額集めたんだから、もうプロって言っても通用するだろう。
「はいどうぞ。熱いから気をつけてね?」
スープをよそり終えたナティの言葉を合図に、今度こそ一斉に手が伸びる。
「どぉ? 美味しい?」
「ああ。明日があるから、おなかいっぱい食べられないのが、残念だね」
そう答えると、ナティがあははと笑った。
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