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第8話 言葉ではなく
団欒 Episode:11
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「どんくらい前の話だ?」
「ほんとにダグさんが、帰ってくる直前で……」
アパートの階段を降りながら答えた。
「真っ直ぐ帰ってればともかく、寄り道でもしてたらやばいぞ」
「ともかく、探さないと!」
「っても、どこを探せばいいんだ?」
ゼロールさんが考え込む。
「ダグさん、分かりませんか?」
「ムチャ言うな。よそのガキがどこ歩くかなんざ、天気予報より難しいぜ」
「そうですけど……」
けど早くしないと、何が起こるか分からない。
その時、それまで無言だったイマドが悔しそうに言った。
「ちきしょう、居場所はわかったけど場所がわかんねぇ!」
「――イマド?」
どこかあたしたちとは違う彼は、ウィンのいる場所がわかっているようだった。
「分かったの?」
「それがわかんねぇんだって! なにせこの辺知らねぇから、どっちの方角かも見当つかねぇんだよ!」
――え?
この言い方……。
急いで記憶を探って思い出す。
そう、確か母さんが時々、こういう言い方をしてて……。
「ねぇ、何か目印になりそうなもの、ない?」
よくこうして地図とつき合わせて、位置を割り出していたはずだ。
「目印? そう言われても……待てよ、ジャンク屋があるな。トタン張り合わせた掘っ立て小屋で、裏手にジャンク品が山積みになってて……」
「そりゃドアルんとこだ。そのガキ、やっぱ寄り道しやがったな。
――ついて来い、こっちに抜け道がある」
急に右に折れたダグさんに続いて、慌ててみんなで進路変更する。
「あそこから連中のアジトまでは、使う道はひとつだ。これ以上は道草もしねぇだろうし、間違いなくどっかで捕まえられるぞ」
場所さえ分かってしまえばあとはダグさんの独壇場で、細い抜け道を迷うことなく選んで行く。
「あっ、ごめんね!」
転がされているごみバケツを飛び越えようとして、餌を探していた野良犬を蹴飛ばしかけた。
「お前、イヌに謝るなよ」
「でも、邪魔しちゃったもの……」
それ以外にもいろいろ障害物があったり塀の隙間を抜けたり、挙句に右左と折れていくから、学院のランニングよりよっぽどハードだ。
「ここ曲がりゃ、あとはいっぽんだ」
先頭のダグさんがそう言って、スピードを上げる。
けどそれを上回ってスピードを上げたのがイマドだ。
「ほんとにダグさんが、帰ってくる直前で……」
アパートの階段を降りながら答えた。
「真っ直ぐ帰ってればともかく、寄り道でもしてたらやばいぞ」
「ともかく、探さないと!」
「っても、どこを探せばいいんだ?」
ゼロールさんが考え込む。
「ダグさん、分かりませんか?」
「ムチャ言うな。よそのガキがどこ歩くかなんざ、天気予報より難しいぜ」
「そうですけど……」
けど早くしないと、何が起こるか分からない。
その時、それまで無言だったイマドが悔しそうに言った。
「ちきしょう、居場所はわかったけど場所がわかんねぇ!」
「――イマド?」
どこかあたしたちとは違う彼は、ウィンのいる場所がわかっているようだった。
「分かったの?」
「それがわかんねぇんだって! なにせこの辺知らねぇから、どっちの方角かも見当つかねぇんだよ!」
――え?
この言い方……。
急いで記憶を探って思い出す。
そう、確か母さんが時々、こういう言い方をしてて……。
「ねぇ、何か目印になりそうなもの、ない?」
よくこうして地図とつき合わせて、位置を割り出していたはずだ。
「目印? そう言われても……待てよ、ジャンク屋があるな。トタン張り合わせた掘っ立て小屋で、裏手にジャンク品が山積みになってて……」
「そりゃドアルんとこだ。そのガキ、やっぱ寄り道しやがったな。
――ついて来い、こっちに抜け道がある」
急に右に折れたダグさんに続いて、慌ててみんなで進路変更する。
「あそこから連中のアジトまでは、使う道はひとつだ。これ以上は道草もしねぇだろうし、間違いなくどっかで捕まえられるぞ」
場所さえ分かってしまえばあとはダグさんの独壇場で、細い抜け道を迷うことなく選んで行く。
「あっ、ごめんね!」
転がされているごみバケツを飛び越えようとして、餌を探していた野良犬を蹴飛ばしかけた。
「お前、イヌに謝るなよ」
「でも、邪魔しちゃったもの……」
それ以外にもいろいろ障害物があったり塀の隙間を抜けたり、挙句に右左と折れていくから、学院のランニングよりよっぽどハードだ。
「ここ曲がりゃ、あとはいっぽんだ」
先頭のダグさんがそう言って、スピードを上げる。
けどそれを上回ってスピードを上げたのがイマドだ。
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