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第8話 言葉ではなく

団欒 Episode:05

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「ねぇねぇ、こっちも教えて!」
「これ? これは……こういう風に線を引けばわかるでしょ?」
「僕も教えて~!」
「ごめんね、ちょっと待って」

 声をかけられるのは嬉しいけれど、そんなに一度には見られない。

「順番にみてあげるから……」

 どう説明したらいいか考えながら、ひとつひとつ宿題に付き合った。
 自分に兄弟がいないせいか、こんな風にまとわりつかれるのが、とても楽しい。

「なんだ、ずいぶん馴染んだじゃねぇか」

 一段落したのか、イマドとゼロールさんが戻ってきた。

「もう、終わったの?」
「ああ、下ごしらえは終わったかんな。あとは直前で間に合うし。
 ――お、懐かしい問題やってるじゃねぇか」

 イマドも一緒に宿題を見始めた。
 苦手な理系を任せられるから、これだとずいぶん楽だ。

 ちなみにゼロールさんは、今度は仕事部屋へ逃げて行ってしまった。

「やたっ、今日は早く終わった! お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがと!」
「あたしもおわり♪ どうもありがと」
「どういたしまして」

 いちどに倍の人数が見られるようになったおかげで、ほどなくみんなの宿題が片付き始めた。

「今日はかあちゃんに怒られなくて済みそうだぜ」
「――何が怒られないんだい?」

 できあがった仕事を納めに行っていたおばさんも、戻ってくる。

「おかえりなさ~い」

「あ、おかえりっ!
 かあちゃん、宿題終わったから遊んでていいだろ!」

「ホントかい?」

 半信半疑のおばさんに、ベックさんに続いて小さい子たちもノートを見せた。

「ホントだよ、ほら! このおねぇちゃんが、教えてくれたんだ」
「俺も終わった」
「へぇ、驚いたね。ちゃんとやってあるじゃないか。このお嬢ちゃんに、しっかりお礼言ったかい?」
「うん!」

 あたしが見たことのない、家族のやり取り。

「そうかい、じゃぁ夕ご飯にしようか。すぐ作るからちょっと待って……」
「あ、オイラ帰る」

 急にウィンが立ち上がった。

「どうしたの?」
「だってオイラ、つい長居しちゃってさ。みんな呆れかえってると思うし」
「あ……」

 確かにウィンは、あたしたちをスラムの外へ送るために、ついてきただけだ。なのにこんなに時間がかかってたら、普通は心配するだろう。

「ねぇ、ひとりで大丈夫? もう暗くなって……」

 心配で声をかけたけど、ウィンからは元気な返事が返ってくる。
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