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第8話 言葉ではなく
遭遇 Episode:11
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◇Diath Side
男性がひとり、真昼のスラムを歩いていた。
年齢は三〇代後半といった雰囲気で、ごく淡い金髪に薄い灰色の瞳をしている。
顔立ちは……かなりの美男子で通るだろう。
当然周囲が振り返って興味を示す。が、当人は知らん顔だ。
「なにさ、お高くとまっちまって!」
誘いこむのに――まだ明るいと言うのに――失敗して、悪態をついてみせる女性までいたが、やはり気を惹かれた様子はなかった。
もっとも彼の場合、別段女性に興味がないというわけではない。
ただ単に件の女性が、趣味ではなかったというだけだ。
彼はここに慣れている様子だった。
「おう、ディアスじゃねぇか。ずいぶん久しぶりだな」
たまたまビルから出てきた中年の男性が、気さくな調子で声をかけた。
ディアスと呼ばれた彼が軽く頭を下げて応える。
「レニーサんとこか? 帰りはこっち寄ってけや」
それにうなずいて、また彼は歩を進めた。
同じスラムでもこのあたりはまだ入り口のほうで、わけのわからない飲食店やなにかがひしめいている。
と、その一角へ彼の身体が沈んだ。
地下へと続く階段に足を踏み入れたのだ。
降り切った先の薄暗い廊下を抜けると、小さなバーがあった。
時間が時間なので開いているわけはないのだが、男性はためらいもなくドアを開ける。
「ディアス?」
扉が開いた音に振りかえったこの店の女主人が、驚いたような声をあげた。
「いったいどういう風の吹き回しよ? まぁいいわ、とりあえずかけたら」
うながされてディアスが、カウンターにかけた。
なにも言わないうちに飲み物が出される。
「で、なに?
あなたがわざわざ出向くからには、なにかあるんでしょ」
「――金髪の少女の話を聞かなかったか。太刀を持っている」
初めて彼が声を出した。低く落ちついた声だ。
「太刀持った金髪の子? それ多分、セジのとこの連中と、やりあってた子じゃないかしら」
偶然通りかかったと、女主人が言う。
「ともかく凄かったわよ。割って入ったと思ったら、あっという間に柄の一撃で、オリアちゃん助け出してね」
彼女はどことなくうっとりした表情で語った。
男性がひとり、真昼のスラムを歩いていた。
年齢は三〇代後半といった雰囲気で、ごく淡い金髪に薄い灰色の瞳をしている。
顔立ちは……かなりの美男子で通るだろう。
当然周囲が振り返って興味を示す。が、当人は知らん顔だ。
「なにさ、お高くとまっちまって!」
誘いこむのに――まだ明るいと言うのに――失敗して、悪態をついてみせる女性までいたが、やはり気を惹かれた様子はなかった。
もっとも彼の場合、別段女性に興味がないというわけではない。
ただ単に件の女性が、趣味ではなかったというだけだ。
彼はここに慣れている様子だった。
「おう、ディアスじゃねぇか。ずいぶん久しぶりだな」
たまたまビルから出てきた中年の男性が、気さくな調子で声をかけた。
ディアスと呼ばれた彼が軽く頭を下げて応える。
「レニーサんとこか? 帰りはこっち寄ってけや」
それにうなずいて、また彼は歩を進めた。
同じスラムでもこのあたりはまだ入り口のほうで、わけのわからない飲食店やなにかがひしめいている。
と、その一角へ彼の身体が沈んだ。
地下へと続く階段に足を踏み入れたのだ。
降り切った先の薄暗い廊下を抜けると、小さなバーがあった。
時間が時間なので開いているわけはないのだが、男性はためらいもなくドアを開ける。
「ディアス?」
扉が開いた音に振りかえったこの店の女主人が、驚いたような声をあげた。
「いったいどういう風の吹き回しよ? まぁいいわ、とりあえずかけたら」
うながされてディアスが、カウンターにかけた。
なにも言わないうちに飲み物が出される。
「で、なに?
あなたがわざわざ出向くからには、なにかあるんでしょ」
「――金髪の少女の話を聞かなかったか。太刀を持っている」
初めて彼が声を出した。低く落ちついた声だ。
「太刀持った金髪の子? それ多分、セジのとこの連中と、やりあってた子じゃないかしら」
偶然通りかかったと、女主人が言う。
「ともかく凄かったわよ。割って入ったと思ったら、あっという間に柄の一撃で、オリアちゃん助け出してね」
彼女はどことなくうっとりした表情で語った。
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