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第8話 言葉ではなく

遭遇 Episode:06

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「あとで説明します。話がこじれるから黙っててもらえませんか?」

 って言うか、もう十分こじれてる気はするんだよな……。
 でもとりあえず、この人が黙ってくれた。

「ともかく、この紅玉でどうにかしてもらえますよね?」

 借金取りに確認する。

「ああ。こっちだってまぁ、とりあえずお金が入りゃいいわけだしな。
 おい、おめぇら、戻るぞ」

 取り立て屋が引き上げて、周囲の空気が緩んだ。

「やれやれ、これで一段落だな」
「みんな、ごめんね。寄り道しちゃって……」
「……そう来るか」

 ある程度ズレた台詞が来るのは予想はしてたけど、まさか「寄り道」って言うとは思わなかった。

「――ねぇちゃん、マジ金持ち?」

 いつの間にやらそばへ来たウィンが、呆然とつぶやく。

「いわゆる金持ちとはちょっと違うけどな」
「ちょっともなにも、金持ちに種類なんてあるのかい?」

 ワケわかんないツッコミを、ゼロールさんがする。

「もう、そんなのどうだっていいでしょ……」

 ルーフェイアの方は、心底嫌そうな調子だ。
 なにせこいつ、自分の家をけっして好いちゃいない。

 ともかくその辺は終わりにして、例の母娘の方へ向き直ろうとした時だ。

「ちょっと、あんたたち!」

 ――やっぱこう来たか。

 俺としてはうまいこと丸く収めて、この母娘が持ってる「とびっきりの情報」をどうにかしたかったってのに、そうは問屋がおろさなかった。

「なんだい、何さまのつもりだい! あたしら確かに貧しいけどね、物乞いじゃないんだ!」

 ルーフェイアのヤツがはっとした顔になった。

「まぁまぁまぁまぁ。とりあえずケガもなかったんだからいいじゃないか」

 事態が分かってるんだか分かってないんだか、ゼロールさんが宥めにかかる。
 ただ、ムダだと思うんだよなぁ……。

「部外者は黙っといで!」

 案の定一喝されて、この人が黙った。

 ――大人のくせにしょうがねぇな。

 まぁ世の中頼りになるやつなんざ、案外いないもんだ。
 で、そのままおばちゃんの独壇場になる。

「金持ちがここへ何しに来たかはしらないけどね、あたしらに恵んでいい気になってるんじゃないよ!」
「ごっ、ごめんなさい!」

 一方的に言いたてられて、こいつがとっさに謝った。

「なに謝ってんのさ。だいいち謝るってことはやっぱあたしらダシにして、自分に酔ってただけって証拠だろ」
「ごめんなさい……」

 ルーフェイアがうつむいてまた謝る。

 ――しゃぁねぇな。

 場を収めようと俺が口を開きかけた時だ。

「おばちゃん、みっともねぇぞ!」

 意外にもウィンのやつが、この中年?女性に噛み付いた。
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