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第8話 言葉ではなく

古巣 Episode:06

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「ショッピングモールって……いちばんの繁華街よね? そうするとウィンのいたスラムって、ファーストの方なの?」

「だよ」

 どうやらあたし、勘違いをしてたらしい。

 ベルデナードという町は、ほぼ円形を形作っている。

 そしてその円を南北に中央通りが貫いて町を二つに分断し、西側は高級住宅地と役所などの機関、東側は巨大なショッピングモールとアパート群が立ち並ぶ構造になっていた。

 ただこの巨大な繁華街は、20年程前に旧繁華街が移設されて出来たもので、町全体に比べると歴史は浅い。
 そして再開発されるはずだった旧市街のほうは、その後大戦で計画が中止され、そのままスラムになってしまった。

 これが俗に「ファースト」と呼ばれるシティ内のスラムで、治安が悪いことで有名だ。

 ただ規模のほうでは、シティ外にあるもののほうがずっと大きく、ただ単にベルデナードのスラムというとこちらを差す。

「スラムって言うからあたし、ついシティ外の方だと……」

 ちなみにこのシティ外のスラムは町の南東、線路の両脇にずっと広がっている。
 ロデスティオ国内の困窮者や、征服された近隣諸国からの難民。そういった人が線路際に住みついて出来たものだ。

「ごめんよ、ねぇちゃん。でもさ、そうほいほい言うのもヤバいかなって」
「あ、そうだね……」

 確かにこの名前を聞いたら、大抵の人は眉をひそめるだろう。

「ったく、まさかそっちの出だとはな。どうりであいつらも肝が据わってるわけだぜ」

 イマドの言う「あいつら」は、どう考えたってシーモアとナティエスだ。

 けど確かにあの二人、ちょっと考えられないほど非常時に落ちついている。
 たまたま戦場で育って慣れてしまったあたしはともかく、普通じゃあんな風にはなれないはずだ。

 逆に言えばそれだけ……凄いところなんだろう。

「ほらねぇちゃん、急いで乗らないと」
「あ、ごめんね」

 ウィンにうながされて、慌てて来たバスに乗った。
 朝のラッシュはもう終わっているらしく、意外に空いている。

 ――それにしても。

 大きな街だった。
 学院のあるケンディクはもちろん、イグニールさえも遥かに上回るだろう。

 大きな公園もいくつもあるし、場所によってはきちんと街路樹が植えられて、この冬の最中に綺麗な緑色を保っていた。
 歩道も全域で完備、しかもなめらかな石畳だ。とうぜん車道はどこも舗装されている。

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