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第8話 言葉ではなく
知らせ Episode:12
しおりを挟む「グレイス様、これがロデスティオまでの切符ですので」
駐在しているロシュマーの家族が出迎えてくれる。
「ありがとう。急に頼んだりして、ごめんなさい」
そういうと彼らが笑った。
「グレイス様はお優しいですね。
我々相手に気を遣ってくださらなくてもいいのですよ」
「でも……」
いつもみんなよくしてくれるけれど、別にあたし自身が偉いわけじゃない。
「さぁ、もうそれはいいですから、船にお乗りください。
ここまで来て乗り遅れてしまっては、話になりませんよ」
「え、あ、そうね……」
ひとりの男性――名前はドワルディ――が先に立って案内してくれた。
「こちらの部屋を押さえましたので」
「――個室の一等かよ。やっぱ半端じゃねぇな」
イマドが驚いたような声を出す。
「え? いつも……そうだけど?」
両親に連れられてあちこち渡り歩いていた頃から、船も列車もたいていは個室だった。
「金あるな~。
まぁ……お前に不自由させたら、首が飛ぶんだろうけどよ」
「そんなひどいこと――!」
思わずそう言うと、ドワルディがまた笑った。
「それも確かにありますが、グレイス様のようにお優しいと我々も一生懸命になりますよ。
ところでロデスティオのどちらまでいらっしゃるのですか?」
「ベルデナードのスラムなの。ただ、番地まではちょっと……」
だいたいは子供たちから聞き出しているけれど、あの子たちも住所まではさすがに知らなかった。
「わかりました。ベルデナードの方にすぐ連絡して、詳しいものを待たせておくようにします。
あと船内や車内での細かい事ですが……どうやらお友達がご存知のようですね。
――グレイス様をよろしくお願いします」
「あ、はい」
イマドが慌てて答えた。
ドワルディが一礼して出ていく。
「――お前マジ、お嬢様なのな」
「そんなんじゃないわよ……」
だいたいこの世のどこに、戦場で太刀を振り回す深窓の令嬢がいるんだろう。
ため息をつきながら部屋のソファに腰掛けた。
イマドの方は、切符を見て時間を確かめている。
「ワサールに着くのが……やっぱ明日の2000か。けどベルデナード行きの最終に乗り継ぎできるから、ラッキーだな。
って、あの人らがそんなヘマやるわけねぇか」
なんかひとりで感心している。
「しっかしこれからしばらく、ひたすら乗るだけってか。ヒマだな」
「あ、あたし宿題、持ってきた」
「は?」
イマドが硬直する。
「んなもの……持ってきたのか?」
「うん。物理と数学と世界史、もう課題、出てたし」
「いや、そりゃ確かに出てたけどよ……普通持ってこねぇぞ?」
「え? そうなの?」
なんだか微妙に会話が食い違う。
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