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第7話 力の行方

露見 Episode:09

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「それで先輩、これからどうするんです?」

「殿下が攫われたことはまだ伏せられてるけど、一部の報道関係に、この資料を見ると手が回ってるわ。
 そこから話が漏れるのは、時間の問題ね」

 そうなったら、アヴァンの国民も報道も、すべての目がそちらを向くだろう。
 当然だがそれ以外のところは、関心が薄くなる。

「殿下が監禁されていると分かれば、捜索と救出をしないわけにいかない。警察と軍が動く」

 だがこの国は、軍の規模が小さい。
 今でも国境線の警備だけで手一杯なのに、両方問題なくやれるとは、とても思えなかった。

「で、軍が動いたのを見計らって、国境線を越えるってワケですか?」
「ああ」

 海に面したこの国は、背後が急峻な山脈に守られていて、侵攻ルートが限られる。
 だが国内の騒ぎで守りが手薄になり、情報も錯綜となれば、まず間違いなく突破されるだろう。
 この国では二正面作戦には耐えられないのを、承知の策だった。

 エレニアが続ける。

「資料によれば、アヴァン国内が混乱するのを待って、ロデスティオの特殊部隊がまず侵攻。
 ルート上の小都市を制圧しながら、第二陣で陸軍が展開するようね」

「市内を混乱させてなんて、ひどすぎ。
 そんなことしたら、またあたしたちみたいな孤児が増えるじゃない」

 ナティエスが悲しげな感想を漏らす。

「まったくだね。
 けどそんなの簡単、止めりゃいいのさ。未然に防いじまえば全部チャラになる」

 どこか獰猛な表情を浮かべて、シーモアがさらっと言った。

「まぁ、そうだな」

 極論だが、間違ってはいない。

 ロアが送ってきた資料は実に詳細で、多岐に渡っていた。
 なにしろ殿下の監禁場所まで特定されているくらいだ。

 どうやら関係者が、迂闊にも書き残していたらしい。だから、すぐにでも手は打てるだろう。

 この件自体が伏せられているから秘密裏に動くしかないが、幸いシエラの傭兵隊は、そういうことには適している。

「総指揮のデリム教官に、進言してくる」
「そうしたら私たちは一旦屋敷へ戻って、念のために装備を整えておきますね」

 口ではそんなことを言っているが、エレニアの表情は、自分が行くつもりだと語っていた。

「頼む。それからシーモアたちは……」
「あ、せんぱぁい!」

 言いかけた私の言葉を、ミルが遮った。

「……なんだ」

 つい、声が冷たくなる。差別するつもりはないが、なにしろこの子には、ずっと振り回されっぱなしだ。
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