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第7話 力の行方
策略 Episode:11
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わざわざ攫って行っていることから考えて、すぐに殺されたりということはないはずだ。
だが、手をこまねいているわけにもいかない。
と、意外な人物から意外なセリフが出る。
「あ、あたしねぇ、クルマ見たよぉ♪ それとね、いろいろ言ってたのも聞いた~!」
「本当か?」
「うん♪」
どこをどう見ているのか分からない能天気な子だが、これで意外としっかりしていたらしい。
「よくやった。そうしたら、それを手がかりに……なんと言っていた?」
「えっとね~、『予定どおり白い森へ』って。でね、珍しい北地区の言い回し使ってたから、過激派の『神々の怒り』の連中だと思う~♪」
「そこまで、分かるのか?」
これはルーフェイアの人選が、正しかったと言わざるをえない。
私たちがアヴァン語を聞いても、区別などつかないのだ。
「それで……その森はどこに?」
「アヴァンシティの北西。別荘地なんだ~。ただねぇ、ちょっと広いから、細かいとこまでは……」
「十分だ」
これだけの情報が揃っていれば、どうにか割り出せるはずだ。学院の方に頼んでもいいし、タシュアならもっと早く絞り込んでくれるかもしれない。
「警備用の通話石で、学院に連絡するわけに行かないな……」
言いながら、来る前に学院が支給してくれたものを出す。
こっちでも万全とは言えないが、アヴァン側から渡されたものよりはマシなはずだ。
「シーモア、ナティエス、すまないが報告だけ、してきてくれないか? 学院のデリム教官が、傭兵隊の指揮を採ってる」
アヴァンの建国祭では毎年、学院の傭兵隊が大掛かりに雇われる。
むしろ私たちのほうが、イレギュラーと言っていい。
そして大掛かりなだけあって、必ず教官が指揮官として同行している。
「あ、はい」
2人の声が揃った。
「あとからちゃんと、私が詳細を伝えに行く。だから、簡単にでいいから」
「分かりました」
駆け出していく後輩の背を見ながら、私は学院に連絡を入れた。
「任務中の、シルファ=カリクトゥスです。学院長に、繋いで頂きたいのですが……」
繋がった先にそう言うと相手が代わり、あののんびりした声が聞こえてきた。
「おや、シルファ=カリクトゥスですね。任務はどうですか?」
「トラブルが発生しました。詳細は後で報告しますが……タシュア=リュウローンを呼んでいただけないでしょうか? 」
「タシュアですか……困りましたね」
向こうで、学園長が口篭もった。
だが、手をこまねいているわけにもいかない。
と、意外な人物から意外なセリフが出る。
「あ、あたしねぇ、クルマ見たよぉ♪ それとね、いろいろ言ってたのも聞いた~!」
「本当か?」
「うん♪」
どこをどう見ているのか分からない能天気な子だが、これで意外としっかりしていたらしい。
「よくやった。そうしたら、それを手がかりに……なんと言っていた?」
「えっとね~、『予定どおり白い森へ』って。でね、珍しい北地区の言い回し使ってたから、過激派の『神々の怒り』の連中だと思う~♪」
「そこまで、分かるのか?」
これはルーフェイアの人選が、正しかったと言わざるをえない。
私たちがアヴァン語を聞いても、区別などつかないのだ。
「それで……その森はどこに?」
「アヴァンシティの北西。別荘地なんだ~。ただねぇ、ちょっと広いから、細かいとこまでは……」
「十分だ」
これだけの情報が揃っていれば、どうにか割り出せるはずだ。学院の方に頼んでもいいし、タシュアならもっと早く絞り込んでくれるかもしれない。
「警備用の通話石で、学院に連絡するわけに行かないな……」
言いながら、来る前に学院が支給してくれたものを出す。
こっちでも万全とは言えないが、アヴァン側から渡されたものよりはマシなはずだ。
「シーモア、ナティエス、すまないが報告だけ、してきてくれないか? 学院のデリム教官が、傭兵隊の指揮を採ってる」
アヴァンの建国祭では毎年、学院の傭兵隊が大掛かりに雇われる。
むしろ私たちのほうが、イレギュラーと言っていい。
そして大掛かりなだけあって、必ず教官が指揮官として同行している。
「あ、はい」
2人の声が揃った。
「あとからちゃんと、私が詳細を伝えに行く。だから、簡単にでいいから」
「分かりました」
駆け出していく後輩の背を見ながら、私は学院に連絡を入れた。
「任務中の、シルファ=カリクトゥスです。学院長に、繋いで頂きたいのですが……」
繋がった先にそう言うと相手が代わり、あののんびりした声が聞こえてきた。
「おや、シルファ=カリクトゥスですね。任務はどうですか?」
「トラブルが発生しました。詳細は後で報告しますが……タシュア=リュウローンを呼んでいただけないでしょうか? 」
「タシュアですか……困りましたね」
向こうで、学園長が口篭もった。
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