上 下
219 / 743
第7話 力の行方

策略 Episode:10

しおりを挟む
 私も使えるだけの回復魔法を使い分けながら、参加者たちの手当てに回る。
 時々不審がって尋ねてくるものもいたが、答えているヒマさえなかった。

「あとは、動かさないように。救急隊が来たら、落ちついて言うことを聞いてください」

 必要最低限のことだけ指示しながら、会場を奔走する。

「――!」

 とある場所で、思わず足が止まった。状況から見て、ここで爆発があったのだろう。

 人の残骸が、飛び散っていた。
 いったい、何人分だろうか……。

「……たいよ……」

 か細い声に、はっと我にかえる。
 少年が倒れていた。

 爆風かなにかでやられたのだろう、左腕がなくなっている。

「大丈夫か!」

 慌てて駆け寄って、そっと抱き起こした。
 すぐに回復魔法をかけてやる。

「僕、どうした、の……?」
「大丈夫、もうすぐ救急隊が来る。そうしたらすぐに、病院へ連れて行ってもらえるから。だから、頑張るんだ」
「うん……」

 とりあえず止血できたことを確かめて、近くにいた女性に少年を頼む。

 怒りがこみあげていた。

 確かにこの国には、いろいろあるのかもしれない。
 だがそれが、この子になんの関係があるというのか。

 おそらく今日を楽しみにして、両親か誰かに連れられてここへ来て、喜んでいただろうに……。

「先輩!」

 向こうからシーモアが駆けて来た。

「救急隊、来ましたから」
「――そうか」

 それならばもう、私たちの出番はそろそろ終わりだろう。

 エレニアやナティエス、ミルもこちらへ来る。
 全員が血だらけだった。

「あ~あ、せっかくのドレスだったんだけどな。ルーフェイアに悪いことしちゃった」
「まぁ、場合が場合だしね。あの子ならわかってくれるさ。にしても許せないな」
「ほんとだよね」

 スラム育ちだと言うこの2人の少女は、惨状に動じた様子はなかった。少し胸をなでおろす。

「それで、殿下の方はどうしましょうか?」
「え? ――ああ、そっちもあったか」

 むしろ私のほうが、いくらか動転していたらしい。

「だが……どうやって追跡する?」

 声に出しながら自問自答する。

 いちおうルーフェイアが通話石を持っているが、望み薄だった。
 この手のものは、真っ先に調べられる。
 あるいはルーフェイアのことだから、見つかる前に捨てたかもしれない。

 それにああいう相手だ。
 連れて行かれた先もおそらく、結界で通話を遮断しているだろう。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

【悲報】最弱ジョブ「弓使い」の俺、ダンジョン攻略中にSランク迷惑パーティーに絡まれる。~配信中に最弱の俺が最強をボコしたらバズりまくった件~

果 一
ファンタジー
 《第17回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を賜りました》 俺こと、息吹翔の通う学校には、Sランクパーティーのメンバーがいる。名前は木山豪気。ハイレベルな強さを持つ“剣士”であり、世間的にも有名である――ただし悪い意味で。  人を見下し、学校のアイドルを盗撮し、さらには平気で他のダンジョン冒険者を襲う、最低最悪の人間だった。しかも俺が最弱ジョブと言われる「弓使い(アーチャー)」だとわかるや否や、ガムを吐き捨てバカにしてくる始末。 「こいつとは二度と関わりたくないな」  そう思った矢先、ダンジョン攻略中に豪気が所属するSランクパーティーと遭遇してしまい、問答無用で攻撃を受けて――  しかし、豪気達は知らない。俺が弓捌きを極め、SSランクまで到達しているということを。  そして、俺も知らない。豪気達との戦いの様子が全国配信されていて、バズリまくってしまうということを。 ※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。 ※本作はカクヨム・小説家になろうでも公開しています。両サイトでのタイトルは『【悲報】最弱ジョブ「弓使い」の俺、ダンジョン攻略中にSランク迷惑パーティーに絡まれる。~全国配信されていることに気付かず全員返り討ちにしたら、バズリまくって大変なことになったんだが!?~』となります。

トリムルティ~まほろばの秋津島に まろうどの神々はよみがえる~第一部 兆しは日出ずる国に瞬く

清見こうじ
キャラ文芸
コミュ障気味(本人は気にしていない)の高校生・高天俊(たかま・しゅん)17歳のクラスにエキゾチック美形の遠野和矢(とおの・かずや)が転校してくる。学校中で注目の的になる和矢が俊の属する美術部に入部したことから度々騒動が巻き起こり……。一方、同じく転校してきた和矢の妹・美矢(みや)を不良達からかばったことで、俊は恨みを買ってしまう。そんな俊には、中学からの親友、吉村正彦(よしむら・まさひこ)だけが知る秘密があって……。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「NOVEL DAYS」「ノベラボ」「ノベルアップ+」にも公開しています。

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

処理中です...